米国小売業界では、インフレによる物価高騰も影響してか盗難被害が深刻さを増しているようだ。米国流通業界に詳しいコンサルタントの後藤文俊氏によると、オンライン融資の仲介会社レンディングツリー社が約2000人を対象に行った調査では、回答者のおよそ5人に1人(21%)が、“意図しない万引き”の経験があると答えたという。「セルフレジを悪用して故意に万引きをした経験がある」との回答は、15%に上ったという。(ここでのセルフレジは無人のフルセルフレジの事になる。)
▼安い商品をスキャンして、高額な商品はスキャンせずに持ち帰ったり、同じ商品2つのうち片方だけのスキャンで、両方持って帰ったりして不正を働いている。こうした不正に対して指摘しても、「スキャンをし忘れただけ」と言い逃れされれば追及のしようがないという悩ましい点もある。セルフレジが“諸悪の根源”とされる雰囲気のなか、大手チェーンストアを中心にセルフレジの撤去や利用に制限をかける動きが拡大している。
▼Walmartは今年4月、盗難多発を理由に、ミズーリ州とオハイオ州の一部店舗からセルフレジを撤去した。全米48州に約2万店舗を展開するDollar Generalも24年度中に300店舗からセルフレジを撤去するほか、9000店舗で一部のセルフレジを有人レジに変更すると発表。Krogerでも、テキサス州ダラスに開設した完全セルフレジの店舗の実験を中止した。一方、Costcoは会員制ホールセラーという業態の特性上、万引き被害のリスクは低いとある。個人情報を会員登録時に取得しているため、盗難が起きづらいのだ。
▼食品産業協会(FMI)の調査によると、セルフレジの割合は21年に30%に上り、96社の3万8000店舗のうち、96%にセルフレジが導入されている。一方、代替として脚光を浴びつつあるのが決済端末とスキャナー、センサーなどが内蔵されたスマートカートだ。Instacart傘下企業が開発した「ケイパーカート」が脚光を浴びつつある。また、Amazon.comでも開発した「ダッシュカート」の導入を開始している。ただ、盗難問題解決の為ではなく、代替としてスポットライトを浴びているに過ぎないのかも知れない。
2024/06/25
