食品スーパーでは少ないが、メーカーでは、Z世代のマーケティングに注力する企業が増えている。味の素は、若者向けに事業開発を行う部署「Z世代事業創造グループ」を21年につくっている。きっかけは、経営層を中心に会社の課題と未来に向けての施策を議論する合宿の中で、Z世代といわれる新しい消費者層に対しの取り組みが不十分であるということ。加えて、若者層では「味の素」というブランドに対する認知度、理解度が低いことの課題であったという。
▼主婦を中心に家庭で調理をする人には認知度が高いが、調理体験が少ないZ世代には、小さい頃から「Cook Do」でつくったチンジャオロースは何度も食べたことがあっても、それが味の素の調味料を使っている認識はない。そんな若者の味の素に対するイメージを向上させたいという思いもあったという。さらに、ここ数年間メガヒット商品が生まれていないこともあり、従来の手法にとらわれない、消費者への新しいアプローチが必要と考えたようだ。
▼次世代の生活者に寄り添う商品やサービスを生み出せるかが焦点であり、従来の事業にこだわらず実行できるように活動拠点を「外」に出した。若者としての意見や思いを表に出しやすい環境をつくるために、渋谷のコワーキングスペース「SHIBUYA QWS」にした。ここで生まれたのがレンジで加熱するカップタイプのお粥「粥粥好日」だ。この商品、セオリー度外視のパッケージで寒色系のグリーンが使われている。このチームだからこその発想に違いない。
▼高校生や大学生などに食生活や食の悩みを聞いた結果、浮かび上がってきたキーワードが「罪悪感」。「食事に時間をかけたくない」との意見も多く、特に昼食は少し栄養補給するだけで十分で、カップ麺や菓子パンを選択しがちという。自分の食生活に対して罪悪感を抱いているというのだ。それに、食事の楽しさ、わくわく感、温かさなどを付加して「お粥」に挑戦したという。発売して購入者で、一番多かったのが20代後半から35歳くらいまでで、Z世代をターゲットにすることで、他の世代にも波及していくと認識したという。
集めた数多くの情報から気付きを得る能力は、共通の感覚を持つ同世代がたけている。マーケティングも、世代間の知見を共有するなど活発な連携が必要になって来た。なお、「粥粥好日」は、味の素の公式通販サイト「AJI MALL」で販売中だ。
2024/07/05