米国小売業界では、Costco WholesaleとSam’s Clubが成長著しい。このホールセラー業態はインフレ下での需要を取り込み特に好調だ。面白いのは、この2社の戦い方の違いにある。Costcoは、実店舗での販売を主軸としているのに対し、Sam’s ClubはECやモバイルアプリを筆頭にDX投資に積極的である点だ。どちらが優れているかではなく、同じ業態でもコアコンピタンス(競合を上回る能力や分野)をどこに設定するかでポジショニングは変化し、戦い方も変わってくるということなのだ。
▼Costcoは、昨年12月時点で米国内の店舗数でSam’s Clubを上回った。最近では、入店時の会員カードのチェックを厳格化したという。インフレで不正利用が増加しているのか、抜き打ちで本人確認用IDとの照合を行ったり、登録情報と実際の利用者に相違がないかを確認したりまでしているとの事だ。それでも、23年9月期の売上高は2422億ドル(対前年同期比6.8%増)、会員数(861店舗)は1億2790万人(前年から約900万人増)という。また、大人気の「ロティサリーチキン」は、4.99ドルに維持している。何とか価格を上げまいとする意地が伝わってくる。
▼一方、Sam’s Clubは、ECやデジタル関連投資を近年強化しており、買物体験のよさという観点ではCostcoに勝るとも劣らない存在だ。モバイルアプリに関しても、セルフ決済サービス「スキャン&ゴー」を提供している。このアプリは3人に1人が利用しているという。また、併設のガソリンスタンドでも、給油機のQRコードをスキャンするだけで給油・決済を完結できる「Scan & Go Fuel」、店内併設のカフェ「サムズクラブ・カフェ」でもアプリ上で注文と決済ができる「Scan & Go Cafe」を提供するという具合だ。
▼Sam’s ClubのEC売上高成長率は23年度第1四半期で対前年同期比19%増、第2四半期が同18%増、第3四半期が同16%増、第4四半期が同17%増、直近の24年度第1四半期も同18%増と、2ケタ成長を維持している。2社の「利用ハードルの低さ」に関しては、Sam’s Clubに利がありそうだ。年会費は、一般会員、上級会員とも10ドル安いという。これからの小売業の戦いの武器(バーバラ・カーン教授が提唱した「カーン小売成功マトリクス」)のどの分野を強化しようとするのか動向を見守りたい。
2024/07/17
