「平成のコメ騒動」以来の不足が・・・

「平成のコメ騒動」を商品部として経験している。平成5年、冷夏などで国内が深刻なコメ不足に陥り、タイ米の緊急輸入などで凌いだ出来事だ。店舗によっては、店長を始め担当者が、地元のコメ農家を訪ねて商品手配をするほどであった。この年に比べてもコメの価格上昇は急激の上がり方をしている。猛暑による不作で流通量が不足する中、インバウンド回復などによる外食需要の急拡大で需給が逼迫して、コメの品薄による価格高騰が続いている。

▼農林水産省は6月のコメの相対取引価格(速報値)を発表したが、令和5年産米の全銘柄平均で約11年ぶりの高値水準となっている。コメの流通は、農協が農家から集めて卸売業者に販売し、卸売業者から食品スーパーや飲食店などへと流通する形が主流になる。農協などと卸売業者が相対で決めた価格を農林水産省が毎月調べ、公表しているのが「相対取引価格」で、コメの価格の代表的指標とされている。

▼7月16日に発表された同価格(速報)によると、玄米60キロ当たり1万5865円。コメの卸売店や飲食店は価格の引き上げを余儀なくされ、日本人の食事に欠かせないコメが手軽に手に入りづらい状況だ。特に、最低価格帯のコメは昨年10月時点で1俵(60キロ)1万5千~6千円程度だったが、現在は2万円台に突入しているという。新型コロナウイルス禍では在庫が積み上ったが、今は85%の米穀店が品薄で「仕入れに苦労している」状況にあるという。

▼食品スーパーにも影響が出ている。産経新聞によると、「平和堂」は、販売価格自体は据え置き、5キロ1500円としていた特売品を1900円に引き上げたとある。価格上昇の背景は〝コメ不足〟にある。政府は「減反政策」は廃止したが、その後も主食用米の生産量の目安を提示し、転作した農家へは補助金を出すなど生産量を絞る仕組みを維持して、コメの作付けは減少傾向が続いてきた。加えて令和5年は猛暑でコメの流通量が減った。

生産者が減少傾向にある中、新型コロナウイルス禍で落ち込んでいた需要が5年産米から一気に回復したことが大きい。足元の物価上昇を考えると、適正な価格に戻ったという見方もできるのだが、新米が出回るころには状況が落ち着くのだろうか。

2024/07/26