一時151円台まで高騰した円/米ドル、161円台からほぼ10円の上昇となった。1986年以来となる160円を大きく上回った歴史的円安は、161円でついに終わったのだろうか。経済の専門家の意見も分かれるところであるのだが、1990年代の円高の時期であった当時、「内外価格差」と呼ばれ、日本国内の価格が非常に高く、海外の価格が安いという価格差が生まれていた。この状況をチャンスと捉え、安い海外商品を持ち込み「価格破壊」と呼ばれるビジネスが大成功した。
▼コーネル大学RMPジャパンの講義のなかでもエピソードとして話題になったが、ダイエーは、ベルギーのビールやブラジルのオレンジジュースを日本で売りまくったのだ。30年が経った今、為替レートは超円高の時代から超円安の時代となり、意味の違った「内外価格差」が生まれている。今回は、国内価格が海外での価格より大幅に安いという、30年前とは逆方向での内外価格差である。
▼「無印良品」、「ダイソー」、「ユニクロ」など海外での活躍が話題になることが多いが、日本ブランドを海外に積極的に打ち出していく大きなチャンスなのだろう。これまで輸入するのが当たり前、輸出などは考えてもいないという企業が多いのだろうが、今のような環境の下では、価格差をチャンスと捉えてビジネスで仕掛けていくことも必要と考える。コーネル大学RMPジャパン12期の受講生が、「ローカル企業として、生き残るために海外進出を考えている」との発言があった。
▼これまでの小売企業の慣習からは、海外展開は限られた大手企業の戦略と考え勝ちだが現在の円安状況は、これ以上望めないようなビジネスチャンスなのかも知れない。若い経営者の望ましい姿を見たような気がする。世代間の価値変化も現実のものになって来た。日本ではZ世代の絶対数が米国に比べて少ないので、影響も限定的と考えていたが、どうもそんなことでもない様だ。食事も、単身世帯比率の上昇、女性の社会進出の増加、男性の家事分担意識の高まりが、「手作り内食」から「加工内食」への流れがはっきりして来た。売場づくりの考え方も検討せねばならない。
コーネル大学RMPジャパン13期の開講は10月の中旬を予定しています。このメッセージ欄もそれまで掲載を休みたいと思います。これまでのご愛読に感謝申し上げます。酷暑の夏、ご自愛専念下さい。
2024/07/31