「学ぶ」と言うと、多くの人が「何を読んだら良いか」や「どう読んだらいいか」に注意が行くようだ。このプログラムでも、修了生の感想に「推薦図書」に関するものを多く聞く。推薦図書が多すぎた、少ない、どの順番で読むのが効果的かなどである。「学ぶ」ことにも戦略が必要で、どの分野、どのテーマについて高めようとするのか、その方向性をまず考えることが大事だ。雑学的な知識を増やすだけに終わらせないためにも必要になる。
▼『論語』為政第二 15に、「子曰、学而不思、則罔。思而不学、則殆。」というのがある。「書を読み学ぶばかりで思索しなければ、物事の道理がよくわからない。思索するばかりで学ばなければ、その時には独断に陥って危険である」とのことだ。歴史を学ぶのに年号や固有名詞を覚えても意味がなく、そのような事件、事象がなぜ起きたかを考え、人や組織、社会を洞察することが重要になる。背後の人間の性や業についての考察が大事という訳だ。
▼そして、考えるだけで学ばないのは危ういとの指摘に続く。数少ない知識と狭い範囲の経験だけで自己流の考えに凝り固まってしまうことの無いように注意しろということになる。ここでの「学ぶ」とは、自分の目や耳などの五感を駆使して入手(インプット)するもの。「思索」するとは、インプットされた知識を抽象化・構造化することでビジネスや実生活への示唆を明確にする。ビスマルクは「愚者は経験から学び、賢者は歴史から学ぶ」と言う。
▼コーネル大学RMPジャパンのプログラムも、ケーススタディを重視している。ケーススタディで学ぶ際に重要な点は、そのケースの当事者として自分自身をあてはめた場合、どのように振舞ったかを考えることだ。そうすることで、洞察することが可能になるからだ。ケーススタディから本質的なものだけを強調して抜き出し抽象化する。このプロセスを経て、「知識」を「知恵」に変えることが可能になるはずだ。抽象化は大事な概念になる。
2024/10/04