改革のために議論を尽くして欲しい「年収の壁」問題・・・

国民民主党の選挙公約が発端となった「年収の壁」問題だが、数日前に党首に醜聞が発覚した。プライベートな問題と言っても、名誉挽回のために変に頑固にならずに、十分な議論を尽くして欲しいと願う。この年収の壁と言われている問題は、複雑で十分に理解できない人が多いからだ。人事を担当した時期があったが、主婦労働者が103万円を「年収の壁」と考えて就業調整するのは、誤解と認識している。十分な説明が必要なことになるはずだ。

▼103万円を超えると確かに所得税が発生する。基礎控除48万円と給与所得控除55万円の合計額を超えるためだ。年収が103万円から1万円増えても税金の増加は数百円。影響は軽微で収入の大半は手取り増となる。106万円を超えると厚生年金加入となり、保険料で手取り減となりやすい「社会保険料の壁」とは状況が異なる。150万円まで配偶者特別控除が満額適用されるように制度変更されたので、18年以降は夫の所得税も増えない。

▼「壁」というと、大きな困難や障害という意味があるので、働き手の就労を妨げる障害物ということになるのだが、103万円を超え納税が始まれば給料の一部は天引きされるが、手取りが以前より減ることはないので、この事で壁というほどの就労障壁とは思わない。学生がアルバイトをする場合も、勤労学生控除を使えば、学生本人の所得税の非課税枠は130万円まで拡大できるはずだ。複雑で分かりにくいので、先ずは理解できるよう進めて欲しい。

▼高度成長期には、インフレ調整で所得税の控除額を引き上げてきた。足元でも調整の必要性を検討すれば良い。働く専業主婦の今の控除額が妥当なのかも検証すべきとの意見も大事だ。パート収入を得ている家庭は、専業主婦が基礎控除と配偶者控除を受け公平ではない。社会保険料の壁も、被扶養の配偶者は第3号被保険者と位置づけ、保険料を納付せず国民年金や企業健保に加入できるという優遇が大きいことの裏返しといえるのだと思う。改革のために議論を尽くして欲しい。

2024/11/16