小売業の「専門化」は自然の成り行き・・・

NHKニュース(20日)で、セブン&アイの創業家側が「金融機関から8兆円超の資金を調達した上でセブン&アイ株のTOBを実施し、今年度中に手続きを完了させる案を軸に調整を進めている」と報じた。創業家側中心の特別目的会社がメガバンク3行や米大手金融機関などから資金を調達するという。カナダのアリマンタシォン・クシュタールから買収提案を受けての対抗する形での対応だ。「PBRが低く割安な日本企業は、海外企業による買収が今後増えるのではないか」と識者はいう。

▼これは、セブン&アイの動向だが、立場的にはイトーヨーカドーのこれからの経営の在り方の方が気になる。コーネル大学RMPジャパン11月のテーマのひとつでもあったが、今チェーンのとるべき戦略は「総合化」ではないからだ。かつて、米国小売業に学び、「業態」品揃え、ワンストップ・ショッピング、セルフサービスなどの導入で「買物」が「楽しみ」に変わるという画期的な現象を引き起こしたのだが、この総合化は終わったのだ。

▼日本が学んだ先の、米国のスーパーマーケットでの買物の多くは、例外を除いて「労苦」であり、今も「労苦」のままなのである。多く顧客が、「まとめ買い」をする結果、15品目以下の買物客専用「エクスプレス・チェックアウト」を設置している。まとめ買いは、買物が、手段であり労苦であるからの行動だ。オンラインで予約して、店頭で購入商品をまとめてピックアップできるサービスを提供しているのも、労苦解消のサービスだからである。

▼日本の小売業は、チェーン論理にある品揃えを、更に押し拡げた「ビッグストアという総合化」を推進した。広範囲な商品品種について「楽しみ」としてのワンストップ・ショッピングができる大歓迎されたのだが、セブン&アイの動向が証明しているように、総合化チェーンから専門化チェーンへと推移している。総合化で生活体験を拡げ掘り下げた顧客は、自分流の生活技術を身につけ、そこにしか売っていないモノ、より自分がいいと思う商品を求めるようになったからだ。「専門化」は自然の成り行きであったのだ。

2024/11/21