無形文化遺産も生活に根付いてこその・・・

生まれは、和紙の産地である埼玉県比企郡小川町だ。この地で産する「細川紙」は、小川町及び秩父郡東秩父村に伝承された楮和紙なのだが、江戸時代の紀州の細川村で漉かれていた細川奉書の製作技術が、伝えられて盛んになったものだ。細川紙は、商家の大福帳などの帳簿用紙や記録用紙、襖紙などに用いられ、江戸庶民の生活必需品として重用された。楮のみを原料に用い、流し漉きするもので、漉き上がった紙は、紙面が毛羽立ちにくく強靭だ。

▼日本時間12月5日、パラグアイで開催中の国連教育科学文化機関(ユネスコ)の政府間委員会は、日本政府が推薦した日本酒や焼酎などの「伝統的酒造り」について、無形文化遺産への登録を決めた。「能楽」や「和食」、豊作祈願や厄払いの踊り「風流踊」などに次いで日本国内23件目の登録となる。日本政府は21年、伝統的酒造りを国内の登録無形文化財に選定、22年に無形文化遺産への登録をユネスコに申請していたものである。

▼杜氏らによる手作業の技術で、室町時代に原型が確立され、500年以上にわたって国内各地の気候風土に応じて発展した。この伝統的な酒造りは、コメや麦といった原料を発酵させ、日本酒や焼酎、泡盛、みりんなどを造る日本古来の技術によるもので、麹を使って原料のデンプンを糖に変えながら、その糖を酵母がアルコールに変える「並行複発酵」という世界でも珍しい発酵技術になる。日本酒などは祭礼行事で使われ、日本の文化や習慣に欠かせない存在となってきた。

▼「コミュニティにとって強い文化的意味をもつ」ことを含めて、登録を決めた者のようだ。日本酒の国内消費量は減少傾向にあるが、海外では「SAKE」として人気が広がっている。それでも輸出総額は3年前から1.7倍に増加したとあるが、411億円(23年)しかない。冒頭に記した細川紙も「日本の手漉和紙技術」として14年に石州半紙、本美濃紙とともに無形文化遺産の登録を受けたものだ。無形文化遺産も生活に根付いてこそのもののはずだ。タイの「トムヤムクン」も登録されたという。切っ掛けとして和の食文化を意識したいものだ。

2024/12/11