世界の食品産業の現状と課題 ③

新聞各紙上で、百貨店・専門店の「初売り」の様子が載っているが、今年も「福袋」は大盛況であったようだ。昨日、一昨日はコーネル大学RMPジャパン13期の開講セミナーの記念講演ダイジェストを掲載させて頂いたが、今日と明日も引き続いて「世界の食品産業の現状と課題」に関してのダニエル・W ・フッカー教授の講演録ダイジェストを掲載させて頂く。

 

  • バリューや体験を優先

ダニエル・W・フッカー コーネル大学教授

私たちコーネル大学のキャンパスがあるニューヨーク州イサカの人々に「イサカは何で有名ですか?」と尋ねると、スーパーマーケットのある街だという答えが返ってくるかもしれない。皆さん、スーパーマーケットが大好きなのだ。

イサカにある2つの店舗だが、「価格」と「価値」の対極にあると言える。ひとつは高付加価値のスーパーマーケッ卜である「Wegmans」。もう一方は「Walmart」。こちらは、誰もがよく知っているようにEDLPで知られている。

Wegmansの特徴は、季節商品が店舗の正面に陳列されることだ。季節の装飾を施した巨大なディスプレイも設置され、お祭り気分を盛り上げてくれるなど、こういう取り組みは非常に重要になる。約20年前、Walmartと「Aldi」がWegmansの商圏に相次いで進出した際には素早く反応、一貫した価格対応の戦略を実施した。その商圏で勝つためには、優れたサービスや優れた商品を提供するだけでなく、競合に対抗する価格戦略も必要なのだと認識した。

現在、Walmartの店舗では、以前より生鮮品を増やしている。店内に入ると、驚くほどの低価格、大きなディスプレイなど楽しい光景が目に飛び込んでくる。ハロウィーンのキャンディ売場も素咁らしい。Walmartは「アクションアレー」と呼ばれる主通路を使った単品大量陳列の平台を利用し、価格訴求するだけでなく、お客さまの時間をも節約している。EDLPのイメージが強いが、オムニチャネルショッパーの価値観を良くわかっている食品スーパーのひとつでもある。同社のオムニチャネルショッパーは、単一チャネルの顧客に比べて購入額が約2倍もあるという。

  • オムニチャネルの進化

オムニチャネルへの適応がなぜ重要なのかについて述べると、お客さまはスマホに非常に多くの情報を集約している。買物をすることも、価格を調べることもできるので、スピードが差別化の要因となるので、その需要に対処するためには柔軟なサプライチェーンへの多大な投資が必要になる。

Walmartではオンラインでの食料品購入が勢いを増して、店舗売上の3倍近く上回っている。その為に、店舗改装して、新たなデジタルタッチポイントを作り、オンラインショッピング体験の向上に投資を続けている。Walmartでは新しい環境を「アダプティブ・リテール」と呼んでいる。AIを用いてショッピングの際にお客さまにアドバイスやガイドを提供するものになる。

「Albertson’s」では、注文を30分以内にピックアップまたはお届けできる「Flashグロサリーサービス」を開始した。1回あたり最大35個のアイテムを購入でき、2000を超える同社の店舗で利用できることから、現在顧客の25%がアプリを使用している。

「Target」は、フルフィルメントモデルに多額の投資を行っており、現在では店舗内およびデジタル経由を含む売上の約97%が、店舗で受注から配送まで一元化されている。(つづく)

2025/01/04