街の明かりを消したらあかん・・・

流通科学研究所 編 毎日新聞出版

昨日(17日)は、6400人超が犠牲になった阪神大震災から30年を迎えた日であった。犠牲者が5000人を超す自然災害は1959年の伊勢湾台風以来で、阪神大震災はあらゆる面で備えが不足していた。震度7の激震が大都市を襲うという大災害は、地震の多い国に住むという現実を突きつけられた。そして小売業に勤める者として多くの教訓を学んだ。ここ数日も地震のニュースが多い。巨大地震に備える面でも、その教訓を改めて確認する必要がある。

▼神戸市では死者の8割が建物倒壊による犠牲であった。耐震改修への対応は地域によってばらつきがあり能登半島地震では繰り返された。この30年で防災対策は進んだのだろうが十分ではない。阪神大震災では、ボランティアが重要な役割を果たした。がれきの撤去や炊き出し、孤立しがちな高齢者のケアなど、行政の手が届きにくい分野で活躍した。「ダイエー」は、行政より早く対策本部を設置、被災地の人々の為に流通の確保に動いた。

▼震災発生と同時に寝食を忘れて立ち向かった流通業ダイエーの動きをレポートした書籍『阪神・淡路大震災 流通戦士の48時間 ― 街の明かりを消したらあかん ―』が復刊されていた。コーネル大学RMPジャパンの1月講義の席で復刊の案内をN女史から受けたので早速に購入し、一気に読んだ。わたくしは山形に産地開発の為に出張の日であり、地震情報は入手していたが、夕食時の報道番組で被災状況を見て愕然としたものであった。

▼この大惨事の中で、ダイエーは被災地の人々のために、流通・ライフラインの確保に動いた。流通こそが人々のライフラインであり、いち早く復活させなければならないとの信念からの行動であった。事業、ボランティア・福祉でもない社会の重要なシステムとしての役割を認識しての行動だ。この阪神大震災時の教訓を風化させず、今の時代にふさわしい災害対策を創造する必要がある。流通とは何か、その重要性を認識し、被災者を助けようと動いた人たちの志を知っておくためにも一読をお薦めしたい。

2025/01/18