
『ぼっちな食卓』岩村 暢子著(中央公論新社)
「日本の食卓が変わった」というフレーズは当たり前の事になった。20年近く前になるだろうか、岩村 暢子氏が『変わる家族 変わる食卓』(中央公論新社)を出版、日本の食卓の調査結果を読んだ時は衝撃であった。私の世代、私の親の世代が無意識にやってきたことの影響を、日常である「食」を通じてあらためて気づかされたからだ。1998年から2002年の間、計6回の調査結果だが、今の人からは「なんで衝撃なの」と笑われそうだ。若い人から、この内容は偏った意見と言われる程に日本の食卓は変わったのだ。
▼岩村 暢子氏だが、当時はアサツー ディ・ケイ(現ADKホールディングス)に勤務していた。現代家族論の著作でも知られている。食卓を定点観測の場として1960年以降に生まれた親たちが形成する、日本の新しい家族を明らかにする研究を行って来た。著作を読むと、第二次世界大戦後の日本人の生活史に詳しく、調査データにもとづいて現代社会の諸問題にも言及している。カスタマーレビューでの感想を読んでも生活の価値変化を認識せざるを得ない。
▼「食卓」は、食材とか栄養のような食物自体の問題ではなく、食事の在り方に関わる調査研究であり、食卓から現代家族の実態を窺うことができる。岩村 暢子氏が、23年秋に初回調査を実施した240家庭をベースとし、10年後、20年後を追跡した『ぼっちな食卓』(中央公論新社)を発刊した。「こんな食生活をしていると人はやがてこうなる」「こんな親子関係だと老後はこうなる」などと良く人は言うが、果たしてそれらは本当か。そうであるなら、何故だろうかを実証する試みでもあったようだ。
▼年始休暇にこの本を読んで見た。重要な発見は、「個の尊重」「個性尊重」などの下に、良かれと思って行っている事が、従来想定しなかった結果を生み出し現代社会を激変させつつあるということであった。親も子も自分の好きな食べ物だけを用意する。好きな時間に食べる。食卓に集まらず、好きな場所で食事をとる。「個人の自由」を最も大切な価値として突き詰めたとき、家族はどうなっていくのか。少子化、児童虐待、ひきこもりなどの問題にも深くかかわる「個」が極大化した社会の現実を綿密な食卓調査が映し出していた。
2025/01/19
