年明けの3日、日本製鉄の買収計画に対して、バイデン元米大統領が中止命令を出し、6日には日本製鉄とUSスチールが共同でバイデン氏らや米競合などを提訴する複数の訴訟を起こすという事態に発展している。23年の年末に日本製鉄が米鉄鋼大手USスチールを買収すると発表、買収額は約2兆円で実現すれば日米企業の大型再編となるのだが、米国で政治問題となり買収中止命令を出したものになる。
▼この買収案件には、鉄鋼業界において米国市場の重要性が増しているという現実が背景にあるのだろう。逆に見れば、日本企業は外国に出て行く必要に迫られている事にもなるのだろう。買収不成立の際に発生する違約金約890億円を仮に支払っても、インド事業などを軸に成長は維持できるとのことで、ここでも海外の市場での発展に負うところが大きいようだ。それにしても、足元での世界経済の流れは、米経済の一人勝ちの様相を呈している。
▼トランプ大統領の就任演説で、米国民の利益を最優先する「米国第一」を掲げ、「黄金の時代がいま始まる」と唱えていたが、株価は米国市場が圧倒しているし、為替も極端なドル高が継続している。世界をみると、欧州市場は停滞が続いているし、中国は構造的問題に直面しているようで、比べて見ても米国経済の堅調さが目立つ。米市場が好調である理由は、デジタル技術の革新が経済を牽引していることにあるのだろう。
▼90年代のITブームとその後00年に起きたITバブル崩壊を思うと、テクノロジーと米国経済に依存する動きは不安だ。新興国などの成長が広がることが望まれる。地政学的リスクと、トランプ大統領の米国第一主義の姿勢がグローバル経済に及ぼす負の影響が気になる。日本でも、更なる価格上昇、インフレにもかかわらず実質賃金が上げられている企業は一部と聞く。個人の生活や消費面でインフレ消費不況が進行しないことを願わざるを得ない。
2025/01/24