「マーケティング4.0」は、アブラハム・マズローの「欲求5段階説」をもとにした、自己実現の考え方になる。マズローが提唱した「欲求5段階説」によると、人間の欲求は生理的欲求、安全欲求、社会的欲求、承認欲求、自己実現欲求の5段階に分かれており、1つの欲求を満たすと次の欲求を満たそうとする考えだ。コトラーは生理的欲求から承認欲求の4つはすでに満たされており、「自己実現欲求」こそが、本来満たすべき欲求だと唱えた。
▼マーケティングにおいても、消費者の自己実現欲求を満たせるかどうかが重要視されるようになった。簡単にいうと「なりたい自分をモノ・サービスによって実現する」ことになる。消費者は自己実現のために、自分の価値観と合う商品を選ぶようになるという傾向を参考にした考え方がマーケティング4.0になる。IT時代だからこそ、人は確固とした存在感を持ちたいと考えており、企業はそれを満たす商品やサービスを提供すべきとコトラーは主張している。
▼「マーケティング5.0」は、2021年に発表、日本版も22年4月に発表されて反響を呼んだ。この12年間にマーケティングの基本コンセプトとも考えられるものが3度も更新された。度重なる更新の主たる理由はデジタル技術の進展にある。コトラーは、マーケティング5.0が生まれた背景として3つの点を上げている。一つは「世代間ギャップ」で、マーケットの中で影響を与える存在は、Z世代/α世代へと移り変わっている。生まれた時からインターネットのこの世代は従来とは異なる消費者行動や価値観を持っている。
▼Z世代以降の人々は、より必要で価値のあることに集中出来るようテクノロジーを常にそばにおいている。Z世代、α世代が市場の中心となっていくこと、AIやロボティクスといった次世代テクノロジーが急速に発展し、カスタマージャーニー(5A)のすべてのプロセスにおいて顧客価値を生み出すことに活用されるようになったことが大きな意味を持っているとしている。なお、5AとはAWARE(認知)、APPEAL(訴求)、ASK(調査)、ACT(行動)、ADVOCATE(推奨)のこと。(つづく)
2025/02/14