“安さ”だけでは差別化が難しい時代に・・・

食品スーパーによるDSフォーマットの仕組みづくりが始まった背景を考えてみたい。やはり、インフレ下での価格感度が高まっている事が一番に上げられる。コメの価格高騰に関する報道番組も続くし、異常なほどの敏感さをメディアが取り上げ続けている。加えて所得格差に伴う「エコノミーマーケット」が一定以上の規模に達し、それを食品スーパーでもカバーする必要が生じているのだ。エリアシェアを高めるために「フーコット」は生まれたと聞いている。

▼そして、ノンフード中心だった他業態企業が、食品の取扱いの拡大し、生鮮食品の扱いまで拡大している。その品質・鮮度は、これまでと比べ物にならない程に上げて来ている。「ドン・キホーテ」や「トライアル」などに加えドラッグストア各社の動きを見ると、業態を超えた競合の度合いが高まっている。そして、商品開発力の向上やIT機器の活用で、安さ実現の仕組みづくりがし易い環境にもなって来ていることが挙げられる。

▼過去にも、食品スーパーもディスカウントフォーマットづくりに取り組んで来た。ただ、多くの場合は、不振店対策としてのそれが多かった。「安さ」実現のために確固たる仕組みを構築することではなく、品揃えを絞り込み、取引先の卸・メーカーに“価格協力”を求めるといった程度であったのだ。そのため持続性や成長性には乏しく、実際、食品スーパーのディスカウントフォーマットの多くは、撤退するか大幅な事業縮小を余儀なくされた。

▼ここに来て、食品スーパーが「ディスカウンティング」に本腰でフォーマット開発に力を注ぐようになった。AIを活用した自動発注や売場管理システムの導入を進め、プロセスセンターの活用を拡大、カテゴリー毎に下限価格帯のPBの開発も加速させている。「ローコスト・オペレーションでよい商品をより安く」のビジョンが実現しやすい環境づくりが整備されて来たのだ。こうなってくると“安さの仕組み”自体では差別化が難しい時代になって来る。

2025/02/21