もう一度、輝いて欲しいと願う・・・

イトーヨーカ堂閉店を惜しむお客さまが、いつまでも店舗前を埋め尽くしていた。若い人の姿も多く混じっていた。構造改革の一環での店舗閉鎖が24日に完了し、TVニュースは最後の日の映像が流された。この2年間で34店が閉店したことになる。予定より1年早く、店舗は発表していた計画に近い形まで減った。私がお世話になった10年間、7店舗に勤務させて頂いたが、残念なことにどの店舗も閉店してしまった。思い出しか残っていない。

▼競争による淘汰はビジネス界では仕方のないことだが、勤務した7店舗は、何処も記憶に残る魅力満載の店舗であった。半世紀に近い時間が流れているので仕方ないことではあるが、閉店日の店頭に集まった人びとの「ありがとう」の声を聞くと、地域の買い物を支えてきた重みを感じる。地元で親しまれ、人びとの暮らしを支援した場となっていたのだ。

▼「拡大のダイエー」に対し「集中のイトーヨーカドー」と言われた時期がある。出店地を慎重に選び、近隣地域に多数出店するドミナント出店して、そのエリアでの存在感を高める方式で事業を拡大して来た。多くの店舗を駅前の一等地に構え、駅前集客を狙うやり方であった。ただ、モータリゼーションの文脈だけ見ても車社会化の進行は著しかった。最適立地が変化していく中で、すべてが中途半端になってしまったのかも知れない。

▼昨年、店舗閉店のニュースが流れてから、20店舗近くの店を訪問して見たが、食品売場と一部のテナント店舗以外にお客さまがいなかった。売場のいたる所に空きがあり、バックヤードが丸出しの場所もあって寂しささえ感じた。新しい売場分類への挑戦もあったが、分かりづらく、生活感が感じられない。セルフレジも利用顧客の年齢を考えると対応を間違っていないかと感じることが多かった。ただ、創業者の伊藤雅俊氏が築いた立地、知名度などを活用し、楽しい買物体験を提供できる場所になるポテンシャルは充分あると思う。もう一度、輝いて欲しいと願うばかりだ。

2024/02/28