コーネル大学RMPジャパンの講義には、コーネル大学教授から、米国の食ビジネスのトレンドを聞く時間がある。4月の講義時に、Zoomを使って米国小売業の状況を話して貰った。マクロの環境は、消費者および競争状況の急激な変化に多くの課題を抱えているようだ。売上の低迷に深刻な人手不足、価格よりコストの上昇率が高く利益確保が難しくなっている。そして消費者の76%は、買物体験が好ましくなければすぐに店を変えるとある。
▼課題に対し小売各社は、拡大するリテールメディアの活用やAi利用への取組が進んでいるようだ。全米小売業協会(NRF)が主催する「NRF Retail’s Big Show 2025」でも生成AIなどの技術革新が目を引いたとある。NRFの30年以上の取組テーマ変遷を振り返って見ても、直近のAIの進化、とくに生成AIの進歩は、「変革」をもたらしているのは確かのようで、OpenAIの「ChatGPT」は、24年大会では、大きく取り上げられた。
▼今年は、早くも生成AI活用の適用性と効果が語られるようになっており、更に「エージェントAI」という、AIがAIをコントロールする仕組みが実際に活用され始めた事例も発表されている。この1年で、AIに出来ること、「させること」の範囲や影響が明確になり、AIとの関わり方が理解されるようになった。その反動としてか、人間同士のつながりが求められるという論調が多くなっている。その実践の場は「実店舗」であるというのだ。
▼「人」と「店舗」は、小売業にとって永遠のテーマだ。そう考えれば、やはり小売業の理念への「原点回帰」が重要なのかもしれない。トランプ米大統領の就任式後の演説に「Revolution of Common Sense(常識の革命)」とあったが、小売業界でも「常識」の革命が進んでいる。ただし、常識そのものが変わるという事ではなく、新たな革命を起こすという事だ。「商品」「店舗」「人(顧客・従業員)」の「つながり」という「常識」が、新たな変革を生むのであり、その時間軸をAI技術などが凄まじいスピードで回していると考えると理解し易いだろう。
2025/04/22
