「目的と手段の混同」はデメリットしかない。目的と手段が混同してしまうと、目的を達成したにもかかわらず成果につながらないといったことが起こる。企業経営の場面だけでなく、政治の世界でも良くあることだ。特に国政選挙が近づくと目先の対策で終始してしまうようだ。足元でも、立憲民主党が消費税減税を容認する立場に転じた。物価高対策として家計負担の軽減を優先すべきだという党内主張を抑えきれなかったようだ。
▼主要野党が消費税減税をめざす方針で揃い、与党である公明党も「減税」を推進する。参院選に向けて財源の議論など後回しにした減税ドミノが広がる。現在の消費税率は、立憲民主党党首の野田氏が引き上げを決めた当事者なのだから妙な気持になる。民主党政権時の2012年に首相として自民、公明の3党で税と社会保障の一体改革をまとめ、消費税5%から10%に引き上げると打ち出したのだ。昨年の代表選でも「安易に減税すべきではない」と断じた。
▼立憲民主党は党勢が振るわず、日本経済新聞の世論調査でも支持率が10%に留まり、5カ月連続で国民民主を下回っているからだろう。これらの各党の提案には財源論への提案はなく、国民民主は赤字国債の発行まで提起している。食品スーパーの現場感で言えば、景気刺激のための減税は、更なるインフレ加速を引き起こすのではないか。価格上昇につながらないか心配でもある。その上、日本は需要不足よりも供給力が不足している。コメの価格上昇が続くように作る側、提供する側の人手不足に課題があるのだ。これに対しての消費減税はあまり効果なく意味がない。
▼減税が決まると必ず「買い控え」が発生する。増税時の逆の現象が起きて、現場は大変な思いをしなくてはならない。そして、期間限定の減税措置とあるが「いつ元に戻すのか」となる。戻す時も非日常の買物現象が起きる。そして、税率を変更するごとに会計に関するソフトコスト増が生じる。また、減税によって個人消費が増え、売上が上がる保証はないので、コストだけ増えることになる。何より、減税によって国の財政赤字が更に悪化することだけは確実だ。この動き、手段が目的になってはいないか、なんとも不思議な現象だ。
2025/05/02