未だ食べられるモノを大量に廃棄・・・

食品ロスは深刻な社会問題となっている。2021年度で約472万トンの食品廃棄があるとされ、家庭からのロスが約236万トン、企業や外食産業からのロスが約236万トンとなっている。分かり易く表すと、国民一人当たり年間約45kgの食品が無駄にされており、1日「約124g = お茶碗一杯のご飯」の食品ロスが発生しており、年間にすると「約45kg = 年間1人当たりのお米の消費量(約53kg)に近い量」の食品ロスが発生している。

▼日本の食品ロス総量は、他国と比較しても高いレベルにある。食料自給率は約38%と低いので、海外から膨大な食品を輸入しながら、まだ食べられる食品を大量に廃棄するという矛盾した構図が問題視される。また、廃棄食品が分解される過程で排出されるメタンガスは、温室効果ガスとして地球温暖化を加速させる一因になる。令和の米騒動の中にあってなお、日本は「飽食の国」ともいうべき状況にある。どうすればこの矛盾を小さくできるか。ひとつは消費者の意識を変えることである。

▼埼玉県水産物地方卸売市場に、「明治」が昨年12月直営店「明治ザ・ステナイファクトリー」をオープンした。近くの戸田市に工場があり、週末を中心に大勢の消費者が市場に買い物に来ることに目をつけての開設のようだ。扱っているのは賞味期限が迫ったヨーグルトや乳飲料。目的は賞味期限とは何かを知ってもらうこと。「(賞味期限は)表示されている保存方法、温度で保管した場合においしく召し上がれる期限の目安です」とアピールする。

▼消費期限との違いを伝え、出荷に関する慣行期限を過ぎた商品なども販売している。顧客からは「フードロス削減の取り組みに協力したい」との反応が多いという。ポジティブな感想を消費者は言うものだと感じるより、こういう場があれば問題意識も高まりやすいと考えたい。自分が食品ロス削減の当事者でもあることを知り、対応する事は消費社会を成熟させるうえでも意味を持つはずだ。ただ、とても息の長い取り組みが必要になるだろう。

2025/05/19