Walmart、Eコマース事業の黒字化に30年・・・

『イノベーションのジレンマ』(クリステンセン著)をもじって米国のフォーチュン誌が「Walmart:イノベーターのジレンマとeコマースの旅」を掲載している。イノベーションのジレンマとは「成功した企業ほど、今の利益や主力事業にとらわれて、新しい技術や市場への対応が遅れてしまう現象」の事で、端的に言えば「成功が、変化への対応を妨げる落とし穴」という事になる。他人に「変われ!」という人ほど、自らは変わろうとしないもののようだ。

▼Walmartは、第1四半期(2月~4月期)決算の発表で既存店売上を堅調に維持しながらEコマース事業が初の黒字化を達成した。数十年にわたる道のりの末にやっとたどり着いたもので”イノベーターのジレンマ”や”現状維持バイアス”がどんなにか企業変革を妨げるものかを示す教訓と論じている。実は、Walmartのデジタル化への挑戦はかなり早い時期から始まっていた。1993年にロバート・デイビス氏率いる小規模なチームがオンラインでの商品販売実験を成功させていたのだ。

▼そして、1998年の夏。デイビス氏は、当時のCEOデビッド・グラス氏にオンラインショッピング事業の成長に必要な部門横断的な協力体制を構築するよう求めた。しかしその要求は拒否された。ECがサムズクラブの最大店舗の売上を超えることは決してないとの予測からだった。デイビス氏は「あれがどれほど大きな間違いだったか、もし私が主張したことを実行していたら小売業界にどれほど影響力があったか、墓場まで持ってく後悔だ」と語っている。

▼Walmartが致命的な過ちを犯していると危惧したデイビス氏は、他のトップリーダーたちと共にAmazonへと移籍した。これにより、WalmartのECの取り組みは休止状態となった。堅調な収益を上げていたリアル店舗が、キャッシュを必要とするオンライン事業に侵食されるのではないかとの心配があったのだ。この懸念がWalmart本社オフィス内で長年渦巻いていたので、ネット注文の配送拠点としてスーパーセンターを使うことに踏み切れなかった。だがこの方法こそが、Amazonをしのぐ配送コスト削減とスピード向上のカギとなっているのだが。(つづく)

2025/05/27