インフレの時代、価格上昇率に差が生まれる・・・

大阪・関西万博が始まり、大阪地区の人材争奪戦が広がっている。正社員だけでなくパート・アルバイトの争奪戦も過熱している。万博会場の警備員の時給は2300円で募集、更に出勤回数に応じて最大10万円の手当が出るなど好待遇で人材を集める。短期で市内中心部から距離もある会場での人員確保には時給を高くする必要があるのだろう。3月の募集時平均時給(全職種)が大阪府1314円と、東京都の1318円と肩を並べる水準になった。

▼ホテルの責任者をしている友人の話だが、「人手不足で客室清掃が出来ないので、客室稼働率より単価を上げる戦略に移行している」という。人件費の高騰が要因の価格高騰だけでなく、異常な人手不足は稼働率を犠牲にして、その分を部屋の価格を上げるという戦略的な対応を取っているのだ。デフレの時代は多くの企業の価格や賃金はほとんど動かなかったのに、インフレになると価格や賃金の動く余地はさまざまな面で大きくなるものだ。

▼デフレの時代には、価格や賃金が下がり続けたのではなくて上がらなかったのだ。価格や賃金は上方にも動かないので、生鮮食品や石油のように相場で価格が上下するものは別として、多くの商品やサービスの価格はほとんど動かない状態であった。賃金も同じで多くの企業や職種で賃金がほとんど動かないというのが特徴であったのだ。インフレの時代になると、商品やサービスによって価格上昇率に大きな差が生まれる。価格が大幅に上がる商品やサービスがたくさんある。他方で、価格が上がらないものも多くある。

▼インフレで上昇率に格差が出てくるのは、賃金でも同じことだ。賃金上昇率の格差が生じ始めているが、賃金が上がらない産業や企業から、賃金が大きく上がる産業や企業への労働力の移動が起こる。一般的に賃金上昇率が高い企業ほど、労働の生産性の伸び率も高くなっているはずで、社会全体で見ても労働の生産性を上げることにつながる。マクロでは理解できるが、企業人としては、価格や賃金分布のどこに自分がいるのかを意識せざるを得ない。二極化の中でメリハリのきいた消費行動をとる顧客にどう対応するかは営業の問題ではなく経営の問題である。