「ヨークベニマル」の動きは・・・

コーネル大学RMPジャパン第13期の修了論文は、福島県に本部を置く食品スーパーマーケット「株式会社 相馬」(仮想企業)での新規事業の企画立案と提案であった。仮想企業の取組を考えることなのだが、毎期受講生の何名かは想定される商圏に実際に足を運び、競合の状況や地域環境を自らの目で確かめている。現地での観察を通じて臨場感を得たうえで、課題解決に取り組みたいという姿勢の表れで成果のひとつでもある。福島県の企業ということで、「ヨークベニマル」の取り組みが改めて注目されることになる。

▼「ヨークベニマル」だが、今年3月、郡山市に開業したショッピングセンター「ヨークパーク」は好調な滑り出しを見せている。地上5階建てのこの施設は、閉店した旧イトーヨーカドー郡山店を改装して誕生したもので、ヨークベニマル「西ノ内店」を核に、ユニクロ、アカチャンホンポ、ロフトなど計34の専門店が入居。広域からの集客に成功し、売上・来店客数ともに当初計画を大きく上回って推移している。2027年春には競合となる「イオンモール郡山」の新装開業が予定されているが、「ヨークパーク」は今後のモデル店舗としても重要な位置づけを担っている。

▼ヨークベニマルの2025年2月期決算は、営業収益こそ増加したものの、人件費や原材料費、地代などのコスト増が重なり、営業利益は減少となった。特にコメの価格が約2倍に高騰したことにより、弁当や寿司といった主力商品の利益率が大きく低下した。また、人手不足対策としてパート従業員の賃金引き上げも継続せざるを得ない状況にある。そのような中でも同社は「店内加工の堅持」を方針として掲げており、単なる品質維持にとどまらず、顧客ニーズへの柔軟な対応や、「出来立て・切り立て」の価値訴求を通じて、他社との差別化を図る重要な戦略と位置づけている。

▼しかしながら、今後の人材確保の難しさを見越し、調理・加工スキルを全従業員が共有し、仮に人員が3割減少しても運営できる店舗体制の構築を目指している。その一環として、副店長が部門マネジャーを兼務する「兼務副店長制度」を導入。特にデリカ部門では、副店長が責任者を兼ねることで現場力の強化と組織の効率化を同時に実現している。さらに、AIによる発注、電子棚札、スキャンカートなどのデジタル施策も導入が進められ、まずは青果部門から、他部門へと段階的な展開が始まっている。デリカ部門では、売上構成比15%を目標に高付加価値商品の提案を強化。西ノ内店での成果を他店舗へ水平展開するため、実証実験も進行中である。

▼経営体制の変化も注目すべき点だ。ヨークホールディングスは2024年9月をもってセブン&アイ・ホールディングスの連結子会社から外れ、米ベインキャピタル傘下へと移行する予定である。その中で、長年課題とされてきたイトーヨーカ堂の再建は避けて通れないテーマであり、グループとしての重要課題である。今期は、ヨークベニマルにとってもヨークHD全体にとっても、将来の方向性を左右する極めて重要な一年となることは間違いない。

2025/07/09