M&Aは重要な戦略手段に・・・

日本の小売業界も、成熟市場への移行や人口減少、コスト上昇といった厳しい環境に直面しており、企業は既存事業の強化、商品開発や新しいサービスの強化、人材育成や業務の効率化といった既存事業をより深く掘り下げるといった従来の延長線ではない成長、すなわちインオーガニックな成長を求められている。中でもM&A(合併・買収)は、競争優位性確保の非常に重要な戦略手段となり始めた。

▼小売市場の構造的特徴は、分散化された市場構造であり、数多くの中小企業が乱立して来たことだ。背景には、日本の小売業が活況を呈し始めた1950~80年代に到来した高度経済成長期かつベビーブームにある。消費意欲の向上と人口増加が相乗効果を生み、小売業の市場規模は急拡大した。この年代の年平均成長率は15%前後を記録していた。また、小売業は1店舗から始めて徐々に拡大するスモールスタートが可能な参入障壁の低さがあった。

▼従って戦いの武器は「規模の拡大」であり、スケールメリットを活かしてコスト削減やPB開発や新サービスの展開などで差別化を図ってきたことになる。しかし、近年の小売業界は厳しい環境に置かれている。さまざまな環境要因が複合的に絡み合い、企業の生き残りや成長の難易度は年々高まっている。構造的課題が顕在化している。代表的なものが、① 市場縮小、② 仕入原価の上昇、③ 賃金上昇、④ 業態間競争とEC拡大、⑤ 事業承継問題であり、その上に上場企業には⑥ アクティビストの圧力が生じている。

▼これまで小売業界のM&Aは、競合他社を買収して一気に規模拡大を図る手法と異なる業態に進出し顧客基盤の拡大を目指す戦略の2つが主流であった。これからもこれらが主流になっていくのであろうが、グローバル市場への展開やSPA戦略強化のもの、さらには「そごう・西武」「ヨーク・ホールディングス」のように不採算事業の売却による選択と集中も進み、M&Aはより多様で重要な経営戦略の一環となっていくだろう。

(2025/07/11)