デジタル投資、1社平均3億1600万円(25%増)に・・・

日経MJの小売業調査の発表が待ち遠しい時代があった。1980年代の事であり、個人的な事になるが、1年間の成績表を見るような気持で待ったものだ。当時は6月中旬の発表であり、勤務していた企業の株主総会前後であったと記憶している。成長戦略の主軸は「規模の拡大」であり、スケールメリットを追求し、大手企業は収益性を強化した時代であったので、売上高のランキングが前年に比べどれだけランクアップしたかを気にしたのだ。

▼その「2024年度小売業調査(第58回)」が発表された。比較可能な483社の総売上高は前年度比6.4%増となり、4年連続で成長を記録している。この1年の特徴は、食品・日用品の値上げが売上を押し上げた一方、正社員・パートともに約5割の企業が人手不足を抱え、省人化や効率化の必要性が増している。このような背景から、リテールテック(小売×技術)への投資が拡大しているとある。

▼店舗のデジタル投資も急増しており、24年度の1社あたり平均投資額は前年比25%増の3億1600万円、25年度は40.8%増の4億4500万円に達する見込み。24年度の投資目的は「省人化・生産性向上」(51%)が最多で、25年度は「顧客データを活用したマーケティング」(30.1%)が中心となる見通しだ。食品スーパーでも、ライフコーポレーションはAIを活用した自動発注システムを生鮮部門全店に導入。気象や特売情報を基にAIが需要を予測し、年10万時間分の業務削減を見込む。

▼ペンシルベニア大学ウォートンビジネススクールのバーバラ・カーン教授が「カーン小売成功マトリクス」で、小売の提供価値を「ブランド重視(商品そのものの価値)」と「体験重視(顧客体験)」とのどちらに重きを置くか、競争上の優位性を「低価格重視」と「摩擦無し重視」の4つの戦略タイプを解説していた。米国では、いかにAIが革命をもたらすかの動きだが、日本でもリテールテックの導入による省人化とともに、顧客体験の質を高める取り組みが急速に進んでおり、競争力の鍵はテクノロジー活用の巧拙にかかっている。

(2025/07/17)