大宮の百貨店地下で久しぶりに『銀座に志かわ』の食パンを購入した。常設ではあるが、狭い売場での展開であり、5~6年前に行列して買った時とは様変わりした印象だ。コロナ禍前後に巻き起こった高級食パンブームは、“プチ贅沢”やギフト需要を背景に一世を風靡し、全国で1000店舗以上が乱立する市場へと拡大した。火付け役は『乃が美』で、“生で食べる食パン”を訴求、その後『銀座に志かわ』『俺のBakery』『SAKImoto bakery』など多くのブランドが参入したのだ。
▼食パン特化型業態はオペレーションがシンプルで参入障壁が低く、冷凍生地やセントラルキッチンの活用により効率化も図れる。メディア報道や事業者側の煽り型の訴求がブームを後押したこともあり、異業種から参入した『銀座に志かわ』は、短期間で100店舗を突破したと記憶している。正直、この業界動向には興味が薄れ、久しぶりに立ち寄った店舗の雰囲気の変化が気になっていた。経済誌「東洋経済」に“あの店は今”というコーナーがあるが、そこに丁度、取り上げられており、興味深く読むことが出来た。
▼同質化と過剰出店によるレア感の消失、コロナ禍での来店制限、メディア露出の沈静化、そして小麦価格の高騰が一気に押し寄せ、業界は急速に収縮。味や価格に対する冷静な評価が進む中、ブームに乗った店舗の多くが閉店を余儀なくされたようだ。特に『乃が美』では、フランチャイズ加盟店との間で契約解除やロイヤリティを巡る訴訟が表面化、業界全体に良くない印象を与える一因となった。『銀座に志かわ』も最盛期の140店舗から約50店舗にまで縮小。『SAKImoto bakery』も約40店舗から14店舗にまで減少している。
▼こうしたなかで、各社ポスト高級食パンの構築に乗り出している。『SAKImoto bakery』は「ベーカリー×スイーツ」という新たな路線に転換、『銀座に志かわ』は食パン特化の軸を維持しつつ、「海外展開」と「イートイン併設」の2本柱で再成長戦略を模索している。かつてのブームがいかに“作られた流行”であり、いかに消費者・事業者・メディアが巻き込まれた構造であったかが浮き彫りになった。今後の焦点は、多品目化、SNS戦略、業態開発、海外展開といった要素をどう掛け合わせ、持続可能な事業モデルを構築できるかに移っている。久し振りに購入した高級食パンだが、妙に価格と品質(味)のバランスが気になった。
(2025/07/30)
