米国8月の消費者物価指数(CPI)上昇率は、前年同月比2.9%、前月比0.4%であった。コア指数(変動の大きいエネルギーと食料品を除いた指数)は、前年同月比3.1%、前月比0.3%である。市場予想と概ね一致する範囲内だったのだが、物価上昇基調は続いている。牛肉価格が13.9%上昇するなど、食料品は3.2%上昇と、前月の2.9%上昇から伸びが加速した。家庭用食品2.7%増(前月は2.2%増)、外食は前月と同じ3.9%増の状況である。
▼コロナ禍以降のインフレは米国の家庭を直撃している。特にカリフォルニア州では生活コストの上昇が顕著で、「The Real Cost Measure in California 2025」によれば、州内世帯の35%が必要な生活費をまかなえず赤字家計に陥っているという。ロサンゼルス郡で4人家族が必要とする生活費は11万9,529ドル、オレンジ郡では12万7,888ドルに達する。全米でも生活苦が広がりつつある。トランプ関税の影響も重なり、更なる物価高が予想される。
▼生活苦によって顕著なのが万引きの増加だ。全米小売業協会(NRF)の発表では、2022年の万引き等の被害総額は1,121億ドル(約16兆円)に達し、コロナ前と比べ93%増というニューヨーク市では2019年から2023年の間に万引きが64%増加、都市部を中心に顕著な伸びを見せている。しかもセルフレジが温床となっているとの事だ。一般消費者が「つい」不正スキャンするケースが多発、生活に余裕のない層が、日常的に小さな不正に手を染めてしまう現実が浮かび上がる。盗難の多い店舗を特定し、セルフレジの撤去に踏み切る企業も出始めている。
▼生活苦のもう一つの表れがBNPL(Buy Now, Pay Later=後払い決済)の急拡大である。BNPLは商品を先に受け取り、利息ゼロで分割して支払う仕組みで、パンデミックを契機に爆発的に普及した。Z世代の6割以上が利用経験を持ち、40歳未満の半数がBNPLを使っている。食料品での利用率も24年の14%から25年には25%に急増、生活必需品まで分割払いに頼る状況が広がっている。BNPLの最大の問題は、利用の拡大が新たな負債リスクを生む点にある。顧客側の問題になるが、「見えない借金」が増えての破綻が心配になる。
2025/10/18
