米国小売業の動向だが、「Walmart」のCEO、Doug McMillonは、講演やインタビューの中で、「AIが、文字通りすべての仕事を変える(change literally every job)」という強いメッセージを発して業界に大きな波紋を広げている。この発言は、単なる業務効率化や一部役割の自動化にとどまらず、あらゆる職務の中身そのものが変わらざるを得ないという構図だ。その変化、否定的なものではなく「ほぼすべての仕事が変化する」との見立てを示している。
▼McMillon氏は、「Maybe there’s a job in the world that AI won’t change, but I haven’t thought of it(世界でAIが変えない仕事があるかもしれないが、私は思いつかない)」との言葉を使い、現在想像しうる職務すら例外ではないという認識を示している。「変わらない仕事」などないのだから、変化に備えることを前提とした戦略が必要という事のようだ。注目すべきは「プラスアップ(plussed up)」という思考である。AI導入によって既存の職務は、拡張し、強化するという立ち位置のようだ。
▼未来志向の姿勢は、「AIによって仕事そのものが変わる。どうすれば自分の役割を、新しいツールを取り入れ従来よりも優れた成果を出せるものにできるか」が本質的な対応であるという。Walmartは、世界で約210万人の従業員を抱える企業だ。今後3年間においては人員数を大きく変えることはない。これは、「人を減らさない」という意味ではなく、役割の再編やスキルシフトによって構成を変化させるということのようだ。
▼Walmart社内では、既に店舗業務や物流センターにおけるAI活用、バックオフィス業務の自動化、チャットボットや“agent builder”といった新しい役割の創出も進められている。AI戦略強化のため、Instacart出身のDaniel Danker氏を迎え入れる動きも公表された。「plussed up」とは、業務プロセスを見直し、AIと人間の役割分担を設計し、成果測定の基準も変えることになるのだろう。ただ、技術導入のコストや専門人材の不足、変化への抵抗などが問題になる企業も多いだろう。ここで言えるのは「自分の仕事がどのようにプラスアップできるか」「どのスキルを現在の枠内で強化すべきか」を観察し続ける姿勢こそ、生き残り戦略になるということだ。
2025/10/19
