『小売業の “いま” 』フッカー教授の開講記念講演要約 ①

コーネル大学RMPジャパン14期が15日(水)開講した。米国コーネル大学の食品産業マネジメントプログラム(FIMP)と全面提携し、一般社団法人 全国スーパーマーケット協会が主催するこのプログラム、初日には記念の特別講演を実施している。今年は一橋講堂(東京都千代田区)で、ダニエル・フッカー氏(コーネル大学教授)とアーロン・スミダ氏(Aldi Foods, Inc. リテール Vice President)の講演が行われた。14期の受講生も初顔合わせをし、この開講記念講演に出席した。

▼開講のご挨拶を一般社団法人全国スーパーマーケット協会、副会長の増井 德太郎氏が行い、続いて『小売業の “いま” ~デジタルトランスフォーメーション、AIなどのトレンドについて~』と題してダニエル・フッカー氏の講演、休憩を挟んでアーロン・スミダ氏の『Aldiのマジック ~Aldiの成長・低価格戦略について~』の講演があった。協会の機関誌「セルフサービス」でレポートされるが、講演の要旨について紹介したい。先ずは、ダニエル・フッカー氏の講演内容だ。

Ⅰ.学びの精神が生む「開かれた大学」

コーネル大学の創設者エズラ・コーネルは1865年、「Any person, any study(あらゆる人に、あらゆる学びを)」という理念を掲げた。当時のハーバードやプリンストンがまだ限られた階層のための学校であったのに対し、コーネルは性別・人種・宗教・経済階級を問わず門戸を開いた最初のアメリカの大学だった。教授は、「この理念こそが、いま私たちのリテール産業が直面する課題にも通じる」と語る。多様性を認め、異なる背景をもつ人々を受け入れる。そこにこそ、組織と社会の進化の鍵があるというのだ

Ⅱ.変化する消費者行動 ― データが描く新しい「Customer Journey」

講演の中心は、現代の消費者行動の変化に関する分析だった。「今日の購買はもはや直線的ではない」と教授は語る。多くの買い物がオンラインで始まるが、最終的な意思決定は依然として店頭で行われる。Eコマースが成長しても、購買の8割はリアル店舗で発生している。つまり、消費者が店舗に来る前にすでに購買体験は始まっており、SNSや口コミ、AIによるレコメンドなどがその意思決定に大きな影響を与えている。この複雑化した購買行動を読み解く鍵は「データ」である。教授は「規律あるデータ主導のストーリー(a disciplined, data-driven story)」として小売行動を可視化し、店舗体験とデジタル接点を統合した顧客理解の重要性を強調した。(つづく)

2025/10/20