―なぜいま「世界標準の経営理論」が必要なのか― ①

『HARVARD・BUSINESS・REVIEW』(DHBR・ダイヤモンド社)誌上に、2014~18年の間連載された「世界標準の経営理論」がある。そこでは経営学の膨大な検証の中から「ビジネスの真理に肉薄している可能性が高い」として生き残ってきた約30の理論が紹介されて来た。そして、この連載に加筆修正し書籍『世界標準の経営理論』(2019年)が刊行されたのだが、現在15万部を超えるベストセラーとなっている。早稲田大学大学院経営管理研究科教授の入山 章栄(いりやま・あきえ)氏の著書で、800頁超の『経営学の教科書』になるのだが、「もはやこれを読まずして経営学は語れない」との声すら出ている。

▼この入山氏が、一度完成したはずの「世界標準の経営理論」を、DHBR誌25年4月号から改めての連載を始めた。ここで筆者は、ビジネス環境は大きく変化し、経営理論の重要性がいっそう高まったと説き、「いまこそ『世界標準の経営理論』の時代である」と訴えている。現在の「正解」のない世界で、ビジネスパーソンは経営理論を「思考の軸」として学び、自らの考えを深化させ、思考を解き放つ必要があると説く。「理論」こそが人の判断と行動を導く指針となると言うのだ。そこで、DHBR誌掲載の内容を土曜と日曜日に記してみたい。コーネル大学RMPジャパンの授業会場での話題のひとつになれば望外の喜びである。

ここから始めさせて頂く。

■ AI時代を生き抜くための「考え方の軸」を持つ

私たちの働く環境は、AIの進化によって急速に変化している。ChatGPTをはじめとする生成AIが登場し、専門知識がなくても誰もがAIを使える時代になった。こうした変化の中で、これからの管理職に求められるのは、「正解を探す力」ではなく、「自分の考えを持ち、決める力」になる。その土台となるのが、「経営理論」という“考え方の軸”になるのだ。「理論」というと難しく聞こえるが、要は「人と組織がどう動くかを説明する考え方」になる。人と組織の本質は時代が変わっても変わらない。だから経営理論は、未来を読み解くための地図にもなる。「理論」は過去ではなく未来を照らす道具ということになる。たとえば、最近注目されている「両利きの経営(知の探索と深化)」は、実は30年以上前に生まれた理論になる。新しいアイデアを生み出す「知の探索」と、既存の強みを磨き上げる「知の深化」を両立する企業ほど、変化に強いと言われている。この「両利きの発想」は、AI時代を生き抜くためにも欠かせない。(つづく)

2025/11/01