米国、早まる夕食時間が飲食ビジネスを揺らす・・・

米国の飲食業界で「ハッピーアワー」が転機を迎えている。かつては客足が減る夕方の時間帯に、酒や料理を割安で提供して集客を図るのが狙いだったが、近年は夕食時間そのものが前倒しになり、ハッピーアワーの存在意義が揺らぎ始めている。もともとハッピーアワーは、19世紀の社交クラブや米海軍の娯楽行事を起源とし、禁酒法時代には外出前に酒を楽しむ「密かな時間」を指した。現在では多くの店が午後4〜7時に設定し、物価高の中で手頃に外食を楽しむ手段として定着している。

▼実際、マンハッタンのバーでビール3杯と軽食3品を頼んでも32ドル程度と、25年前の水準で「庶民の味方」となっている。ところが、予約サイト「オープンテーブル」の飲食データによると、米国では午後5時台の予約が前年より11%増、6時台も8%増と最も人気が高い。一方、7時以降の予約は伸び悩んでおり、特にニューヨークでは5時台の予約が20%も増加している。口コミサイト「イェルプ」のデータでも、2025年のレストラン予約の6割が午後4時~6時台に集中し、主流だった7~8時台の食事から大きくシフトしている。割引施策は収益面で厳しいので、飲食業経営者の間では「サービス価格を設定せずとも客が来るなら廃止したい」との声もある。

▼この傾向の背景には、Z世代の健康志向の高まりがある。彼らは夜遅い食事を避け、甘いソーダやアルコールを控える傾向が強い。また、リモートワークやハイブリッド勤務の普及により、夕食時間を柔軟に設定できるようになったことも影響している。加えて、人気店でも早い時間なら予約が取りやすく、混雑を避けられるという実利的な理由も大きい。本来のハッピーアワーが減る現状は、外食文化そのものの転換点を示しているのかもしれない。

▼事実、若者側からはハッピーアワーの「割引額が小さい」「価格が上がって魅力が薄れた」との不満も噴出。ネット上では「そもそも、ハッピーアワーとは何か」を巡って論争になったと聞く。ある飲食グループの経営者は「今の若者は本来のハッピーアワーの意味を知らない」との嘆きが聞こえる。若年層中心の「早い夕食」は、単なる生活習慣の変化にとどまらない。飲食業の時間帯別集客構造や価格政策、店舗オペレーションのあり方に影響を与える可能性が高い。

2025/11/18