包装切り餅が10月から値上げされており、正月用の鏡餅などへの影響も気になるところだ。主な原因は、もち米の生産減少による需給の逼迫にある。昨年の夏以降のうるち米の品薄と価格高騰が影響し、店頭でうるち米が相次いで品切れとなったことを受け、産地の農業協同組合(JA)は集荷数量を引き上げる目的で24年産のうるち米について、農家からコメを集める際に支払う前払い金の追加払いを進めた。この流れから25年産は収入が多く手間がかからないうるち米に生産を切り替える農家が増えたのだ。
▼農林水産省公表の25年産米の等級検査の速報値(9月末時点)によると、もち米(水稲)の検査数量は前年の同時点と比べて11.3%少なく、反対にうるち米(水稲)は11.6%増となっている。この動きの結果、産地ではJAと民間業者らの集荷競争がうるち米以上に激化しているらしい。日経POS情報によると、もち米1㎏の売れ筋上位10品目の平均店頭価格は10月が1068円だったのだが、これは、前年の713円と比べて49.7%も高い価格になる。24年12月以来10カ月ぶりの高値になっている。今度はもち米騒動だ。
▼このような中にあって、福井県坂井市の稲作農家らでつくる一般社団法人「坂井担い手ネットワーク」が、「ベルク」とコメの直接取引を始めたとの記事が掲載されていた。25年産の新米「坂井米」を先ず414トン納入、今後の増量も視野に入れるとある。JAなど中間流通に頼らず販路を確保し、販売量と価格の安定を狙うとの内容だ。ベルクも精米会社を完全子会社化し、農家から仕入れたコメを自社グループ内で一貫販売できる体制を整えた。店頭価格だが、この坂井米は5キロ4390円と手頃な価格での展開をしている。
▼気候変動やインフレなどの影響もあり、欲しい商品が必ず店頭に届く時代ではなくなったとの認識を持たざるを得ない環境になった。小売側にとって直接取引は調達の安定につながる。個人農家は安定した販売先の開拓が難しく、集荷力のあるJAや仲卸に依存しがちだが、直販で収益性向上を目指すことが出来る。坂井市の担い手ネットワークとベルクの直接取引は、コメ価格の高止まりや流通の硬直性に対する不満が高まるなか、コメ流通を見直す新たな動きとして注目されそうだ。
2025/11/28
