大阪に住み、農業従事者となって頑張っている友人から、農業委員会で東京大学大学院特任教授 鈴木宣弘先生の話を聴いたとの連絡を受けた。鈴木先生は、コーネル大学RMPジャパンでも何年にも渡りご出講頂いている。「コメ生産・流通の現状と課題」とのテーマであり、講演の趣旨も添付されていた。以下が、その講演主旨になるが転載させて頂く。
▼現代日本の食と農を巡る情勢は不安定さを増しており、令和の米騒動も依然として収束する兆しが見えない。その背景を紐解くと、戦後にアメリカからの輸入農産物が急増して国産麦・大豆などが打撃を受けた歴史的経緯に加え、米の消費量減少に伴って減反政策を実施するなど長期的な自給力低下を招いたことが、猛暑や需要増加と重なって表出したのだ。
▼農水予算は、長年にわたり抑制されて来た。加えて資材の高騰や国際情勢の悪化なども押し寄せている。特に輸入依存の肥料は値上がりが続き、飼料価格の高騰で酪農経営も厳しい。野菜の種子も9割近くが海外依存の状況であり、地域で種を守る取組み強化は欠かせない。貿易自由化で安価な農産物を受け入れてきた政策責任は大きいが、リスクある「安さ」を選び、地域の農産物を支える消費行動を十分に取らなかった国民側の問題ともいえる。食料備蓄も消費量の1.5カ月分となり、「輸入が止まったときに子供たちの命を守れるのか」という課題が突き付けられている。
▼「日本は農業に過保護。補助金漬け」という誤った認識に基づく意見が散見されるが、「命・国土・環境・ 地域のコミュニティ」を守る農業は、国を挙げて支えるべき産業との認識が欧米諸国では常識だ。昨年の米価の上昇は、30年前の水準に戻ったに過ぎず、コスト高の現状では採算が合わない。生産者が求める価格と消費者が支払える価格の差を埋める仕組み作りが必要だ。
▼消費者は、農業や食料自給率問題を、自分たちの命の問題でもあると認識することが肝要だ。生産者と消費者が相互に安全で美味しい地域の農産物で繋がり、支え合って都市農業・農地を守ることで、国内資源を活用した高品質な食料供給が実現する。輸入依存からの脱却を図る上では、やがて生産者・消費者という区別をなくし、住民として地域全体で分担して遊休農地を耕し、家庭農園や市民農園を拡大する「飢えるか、植えるか」運動も考えられる。
都市部では大型商業施設の新設など、大規模な農地転用案件も多い。食料危機に耐えられる日本を創る鍵となる都市農地の保全に努め、地域の食を支える中心を担う「最後の碧」として、農業委員会の委員の皆さんの活躍に期待していると結んだとの報告であった。食品スーパーの立場からも考えたいテーマだ。
2025/12/08
