小売業を取り巻く経済環境・・・

昨年の日本経済は、トランプ関税という逆風がありつつも、交渉の結果「輸出産業に大ダメージ」となるほどではない見通しで、総じて底堅く推移した。一方で対米輸出の伸び悩み等から生産活動は力強さを欠き、その穴を埋めたのが個人消費ということになる。人手不足を背景に賃金は高い伸びを示したものの、物価も高止まりし実質賃金はマイナス基調。それでも株価上昇(新NISA等で家計に株式が組み込まれやすくなったことも含む)による資産効果、利子・配当収入の増加が消費を下支えした。

▼物価面では「食品」が高止まりの主因となり、25年1〜10月のCPIが前年同期比3.3%上昇に対し、食品は7.1%上昇。食品はCPIの4分の1強を占め、物価上昇への寄与(1.9%)が全体の半分以上に達した。円安がインフレ沈静化を遅らせ、輸入食材から加工食品、さらにはコメにも波及した。備蓄米放出の効果は限定的でもあった。企業部門は、日銀短観(9月)で25年度の経常利益が5期ぶり減益見通しながら減益幅は小さく、景況感DIも非製造業中心に高水準。物価上昇の定着が売上増につながり、企業心理を支えている。

▼今年は春闘賃上げ率が25年(5.52%)をやや下回っても5%台維持を予想し、加えてガソリン暫定税率廃止や重点支援地方交付金拡充などの政策も消費支援要因と位置づけられる。ただしリスクは「円安による物価高止まり」。理論的には日米金利差縮小が円安抑制要因のはずが、25年後半は円安が進み、積極財政への警戒(円離れ)や金融政策見通しが背景にある。行き過ぎた食料インフレ抑制には、最低でも0.5%程度の追加利上げが必要になりそうだ。

▼国際情勢面では、日中関係悪化による渡航自粛がインバウンド(24年10月〜25年9月の訪日4164万人、中国系28%、旅行消費9.2039兆円のうち約30%が中国の2.6330兆円)に与える打撃や、レアアース等の対日規制強化リスクがありそうだ。米国も中間選挙を控え、雇用回復が遅れれば追加関税等が再燃し、米中緊張が株価下落につながり、消費悪化が日米へ波及する懸念もある。流通業界にとって、プラスは賃上げ・株高による消費の底堅さ、マイナスは構造的人手不足と円安局面での原材料・輸入物価上昇による収益圧迫になる。

株高の恩恵が及ばない層は低価格へシフトし、消費の二極化が進む。また、103万円の壁問題、26年の週20時間以上の社保適用拡大など制度変更は、労働投入拡大の余地と同時にコスト増リスクも内包している。長期的にはAI・ロボティクス等で省人化と付加価値向上を進め、価格転嫁が難しい領域ほど生産性で吸収し、中国依存を減らす調達ルートを確立ことが必要になりそうだ。

2026/01/07