(昨日のつづき)“最低賃金上昇が、省人化の必然”になる理由だが、賃金上昇は「全社に波及する固定費」になりやすい。最低賃金の底上げは、下限時給だけでなく、採用時給レンジ全体を押し上げ、結果として“人件費の水準”が戻りにくいからだ。加えて、採用で埋められない部分が出ている。足元の求人倍率が、全体では高水準で推移しつつも、卸売・小売で新規求人が減少というデータがあるが、現場で「採用の打ち手が効きづらい」との面を示唆しているのだ。だから「工程の作り替え(標準化・省人化)」が最優先になるのだ。
▼最低賃金の上昇分を、値上げで回収するのか、省人化で吸収するのか、その構成比はとの議論は必要だろうが、足元の情勢は、更なる値上げは考えにくく、省人化にならざるを得ないだろう。では、レジに続く第2の投資領域(発注自動化、デジタル表示、清掃、惣菜工程など)は何になるのか、省人化の結果、浮いた人時をどこへ(惣菜/欠品対策/売場づくり/接客)再配分するか、採用が特に困難な店舗に対して、投資を優先する方針が立てられているのかを考えるべきであろう。
▼昨年は、省人化が「方針」から実装に移った年であった。幾つかの事例を各社の広報や決算関連資料、業界マスコミに掲載されたものを記しておきたい。
●「ライフコーポレーション・統合報告書2025」には、採用困難な店舗を中心に、3か年で20億円を投資してセミセルフ・セルフレジを導入した旨が明記されている。人が取れない店舗から優先投資という、投資配分の考え方が経営実務として重要になる。
●日立製作所の発表に、サミット全店に需要予測型自動発注を導入し、日立が提案した内容の採用率95%で運用、省人化に加え欠品改善・在庫低減を確認したとある。人手不足対策は「省人化」単独ではなく、欠品・在庫(売上と荒利)まで同時に改善できる領域(発注・補充・惣菜計画など)から着手するとROIが出やすいとの解説だ。
▼「アークス統合報告書2025」でも、フルセルフ/セミセルフレジ導入に加え、自動発注の導入で発注作業の省力化に取り組む旨が記載されている。また、「ヤオコー統合報告書2025」でも、フルセルフレジを66店舗に導入、さらにAIによる自動発注やデジタルプライサー活用で、レジ・グロッサリー部門の生産性向上とランニングコスト削減を進めている旨が記載されていた。レジだけではなく、発注/表示まで含めて、人時を削減する設計が極めて大事になるようだ。
2026/01/13
