“CES2026”に見る“リテールメディア”の位置づけ・・・②

(1月30日からのつづき)Krogerは「不合理な世界の中でブランドを育てる」をテーマにしたセッションの中で、リテールメディアの位置づけを、Albertsonsとの大型合併計画が独禁法の壁で座礁したことが前提になるという。対Walmartの規模獲得、リアルにも触手を伸ばすAmazonへの防波堤という「規模の物語」が崩れた後、Krogerは約60店舗閉鎖を発表し、“強い市場への集中”へ転換した。ここで示されるのは、接触面の広さでAmazonに、価格と物流効率でWalmartに勝てないという冷静な自己認識である。日々の食事という習慣を支える店として立ち位置を明確化している。

▼Krogerが強調するのは「食」の保守性と信頼の重さだ。味、鮮度、安全、産地、家族への責任といった価値は、ワンクリックの利便性や価格最適化だけでは置き換わりにくい。料理好き・家庭持ち・健康志向ほど「実物を見て選ぶ」ことは不可欠になる。そこでKrogerはローカル商品とPBを強化し、「安いから」ではなく「いつもの味だから」選ばれるエンゲージメントを守る。リテールメディアであるKroger Precision Marketing(KPM)は、ROAS最大化や広告枠拡張を第一目的にしないため、広告商品として語られにくい。重視するのは、どの食材がどの家庭でどんな頻度で選ばれているかという「食の習慣データ」。レシピ文脈や食事シーンに沿い、買い物体験を邪魔しない“そっと支える”設計に徹する。ここでは「食材を選ぶ瞬間を邪魔した時点で、指標が良くても失敗」という言葉が象徴的で、広告よりも習慣の維持が最優先になる。

▼Targetのリテールメディアの定義は、さらにCX寄りで、「広告ではなく選択体験を設計する」。無理に当てに行くのではなく、生活者にとって意味のある選択が自然に立ち上がる“余白”をつくるという。パーソナライズも「正解を当てに行くアルゴリズム」ではなく、“発見の楽しさ”を守るために使うべきだとされ、迷う時間・比較する時間・想像する時間を奪わない設計が重視される。売場やアプリ自体が「目的買い」だけでなく、“何か良いものに出会う時間”として機能し、リテールメディア単体が成長エンジンではなく「成長をどう感じさせるか」を編集する装置だと語られる。会員プログラムTarget Circle 360も、単なる速さ・安さ訴求ではなく、「発見した熱量を途切れさせず、後日でも同じ熱量で買える」ように設計し、結果として“選び続けられる理由”を積み上げLTVを高める。Targetにとってリテールメディアは広告枠でも収益ラインでもなく、「意味を与え続ける編集権」だ。

▼米国でのリテールメディアが「広告の成長領域」だった時代は終わった。同じ言葉でも4社の“本質”は異なり、Amazonは規模と導線で購買体験を再設計し、Walmartは売上差分を測り、Krogerは食の習慣を守り、Targetは選ばれ続ける理由=LTVを育てる。収益面では規模が重要で日本で成功できる企業は限られるかもしれないが、自社の成長・競争戦略に沿って再考し組み込めば別の成功形が見える。リテールメディアは広告よりCRMに近く、AIやロボット同様「導入が目的」になってはいけない。技術を自社のDNAとCXへどう結び付けるか——これがAI時代に小売が逃げられない問いだ、と「CES 2026」のレポート記事は結んでいた。

2026/02/02