―なぜいま「世界標準の経営理論」が必要なのか― ㉙

早稲田大学大学院教授の入山 章栄氏の著書『世界標準の経営理論』(2019年刊行)は、15万部を超えるベストセラーとなっている。その入山 章栄氏が、一度完成したはずの「世界標準の経営理論」をダイヤモンド・ハーバードビジネスレビュー(DHBR)誌25年4月号から改めての連載を始めた。連載論文のエッセンスを土曜、日曜日に紹介している。今回から「自己決定理論」を取り上げる。

■近年の経営学での「モチベーション研究」分野は、自己決定理論への注目が高まっている。特徴は、モチベーションを「外発的動機」と「内発的動機」という単純な二分法では捉えず、行動がどれだけ自分の価値観やアイデンティティとして受け入れられ、内側から湧き出てきたもののように経験されているかに重点を置くところにある。これからの時代、どのように仕事を「自分ごと化」し、モチベーションを高めていくか考える。今回は、“モチベーションは量より質”に関する内容になる。

 ■現代経営学でのモチベーションに関する「3大理論」は、「期待理論」(expectancy theory)、「ゴール設定理論」(goal setting theory)、「社会認知理論」(social cognitive theory)だが、従来のモチベーション論は「やる気を上げれば成果が出る」という“量”の発想になりがちであった。今回の「自己決定理論」が強調するのは、そのやる気が本人にとって“自分の意思・価値観”として引き受けられているか(=自己決定されているか)という“質”の問題となる。行動が「自分の内側から湧いたもの」と経験されるほど、同じ努力でも持続し、学習し、成長につながりやすい。逆に、表面上は頑張っていても「やらされ感」が強いほど、疲弊や反発が起きやすい──これが今回の出発点になる。

■ここで基本になるのが、内発的動機/外発的動機の定義になる。内発的動機は「面白い・楽しい」など活動そのものから満足が生まれる状態。外発的動機は報酬・評価・昇進・罰など、活動と切り離された結果によって行動が促される状態となる。ただし自己決定理論は、内発か外発かの二分法では終わらない。外発的動機でも、本人の価値観と結びついて“自分ごと化”されるほど、自己決定性が高まり得る。ここが実務上の核心になる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
※これは、KPI・査定・表彰(外発)を否定するものではない。実務的には、「どう設計すると現場が“自分ごと化”できるか」を議論のテーマとして現実に刺さるように討議してみたらよいと思う。例えば
●我が社の直近の施策で「やらされ感」を生んだものは何か?原因は“制度”か“運用”か?
●「自分ごと化」できている店長・できていない店長の差はどこに出るか?

2026/02/07