流通科学大学(神戸市)で体感して頂きたい・・・

2月のコーネル大学RMPジャパンの講義は、流通科学大学(神戸市)で実施される。この大学、1988年にダイエーグループ創始者である中内 㓛氏が私財を投入して設立したもの。流通を科学的に研究教育することを通じて、世界の平和に貢献し、真に豊かな社会の実現に貢献できる人材を育成することを建学の理念に掲げている大学だ。このキャンパスに立ち、小売業が近代化に向けて進みだした当時のエネルギーの一端でも感じて頂けたら幸いだ。

▼中内 㓛氏は、闘う理念型・カリスマ型で、価格と商慣習の“聖域”に踏み込むことを恐れず、正面衝突も辞さない人柄であった。ダイエー創業者として「消費者のために、流通が価格と仕組みを変える」という思想を掲げ、日本の小売業を“産業”として一段引き上げた人物だ。当時の慣行(メーカー主導の価格・再販統制)に真正面から挑み、「よい品をどんどん安く」を掲げて値ごろを作りにいった。メーカー圧力の中でも安売りを継続したことが、消費者側に価格決定権を引き寄せる象徴になった。

▼また、「チェーンストア/GMSモデルの社会的定着を加速」させた。戦後の成長期に、総合スーパーの拡大とチェーン運営の考え方を広め、流通の近代化を牽引した「旗手」と評されている。メーカー依存の限界を越える手段としてPB商品を推進、メーカーの協力が得られないなら自社で作るという発想でPBを進め、価格と品質を自ら設計する方向へ小売を押し出しもした。そして、事業だけでなく、教育機関(流通科学大学など)の設立・運営でも「流通の社会的地位向上」を狙った点などたくさんの功績がある。

▼戦争体験が原体験となり、「飢えのない生活を実現する」ことを経済人の責務だと語り、生活者の実感に根差した価値観を持っていた。「お客さまは最高の教師」という姿勢で、顧客の不満を起点に改善を重ねた。代表的エピソードは、「ダイエー・松下戦争」であろう。家電値引き販売をめぐる全面衝突で、値引き販売に対しメーカーが出荷停止で対抗、ダイエー側が独禁法の観点から争う構図となり、価格決定権をめぐる歴史的事件として残っている。なお、「連絡事項」欄に「松下電器への挑戦状『幸之助氏は一時代前の天才』中内㓛・ダイエー社長/週刊『ダイヤモンド』1969年11月17日号掲載記事概要を添付したのでご覧頂きたい。

▼そして、栄光だけでなく「教訓」も残した。中内氏の拡大路線の陰でダイエーは巨額の借金を抱え、バブル崩壊や震災などの外部ショックも重なり経営危機に陥った。のちに産業再生機構の支援を受ける流れとなったのはご承知の通りだ。この流れを含めて、理念(消費者第一)と仕組み(規模・財務・ガバナンス)をどう両立させるか、学ぶテーマでもある。

2026/02/10