
後藤文俊(米国流通コンサルタント)撮影
Amazonがリアル店舗事業として展開してきた「Amazon Fresh」が、その歴史に幕を下ろすことになった。2月1日、メリーランド州やバージニア州など東海岸を中心とする多くの店舗が営業を終了、カリフォルニア州など西海岸の店舗も順次閉鎖されることが確定している。Amazonが、WalmartやKrogerといった食品スーパーに挑んだプロジェクトは、撤退を余儀なくされた。なぜAmazon Freshは失敗したのか、要因と今後のAmazonの食料品戦略について考えてみたい。
▼今回のAmazon Fresh全店閉鎖のニュースは、米国小売業界にとって衝撃的ではあるものの、決して予想外の出来事ではなかったという。Amazonは2017年に「Whole Foods・Market」を137億ドル(約2兆550億円)で買収し、食料品業界への足がかりを築いた。しかし、Whole Foodsはあくまで富裕層向けスーパーであり、Walmartのようなマス層を取り込むには価格が高すぎた。そこで自社ブランドで立ち上げたのがAmazon Freshだったわけだが、その中身はあまりにも中途半端だった。多くの専門家や従業員が指摘するように、「アイデンティティの欠如」という致命的な病に冒されていたようだ。
▼最大の売りであった「Just Walk Out」技術の失敗も撤退の大きな要因だ。レジを通さずに商品を手に取って店を出るだけで決済が完了するというこの技術だが、未来的ではあったが、日常の買い物においては必ずしも客が求めているものではなかった。カメラやセンサーに監視されながらの買物に、多くの顧客は抵抗を感じ、従来のセルフレジや有人レジを利用することを好んだ。この技術を導入・維持するためのコストは莫大であり、低利益率が常識の食料品業界においては致命的だった。24年の時点でこの技術を撤退、スマートカート「Dash Carts」への移行を進めていたが、時すでに遅しであったようだ。
▼今後の食料品戦略だがWhole Foods・Marketの拡大に全力を注ぐ戦略へとシフトしている。新たに100店舗以上のWhole Foodsを開店する計画を発表しているが、注目すべきは、「Whole Foods Market Daily Shop」という小型店舗フォーマットの展開になる。都心部での利便性を追求したものであり、昨年のコーネル大学RMPジャパン米国研修の折、店舗視察をしている。また、オンライン食料品デリバリーの強化も進めている。Amazonの食料品部門の売上高は年間1500億ドル(約22兆5000億円)を超えており、依然として全米トップ3の座にある。特にプライム会員向けの配送サービスは強力で、生鮮食品の当日配送は飛躍的に伸びている。リアル店舗を持つリスクを最小限に抑えつつ、得意の物流網とWhole Foodsのブランド力を組み合わせることで、Walmartに対抗しようという算段のようだ。
2026/02/20
