業界の用語集『成長店のための必須単語701』(日本リテイリングセンター)を渡され、チェーン化に必要な専門用語と慣用語701用語(見出し語)を暗記しておくようにと指示を受けた。昭和46年の春、入社直後の社内教育時のことである。この用語集、何度も改定を重ねて現在は『チェーンストアのための必須単語1001』の名称になっており、チェーンストア経営に不可欠な単語が解説され、経営する上での努力の方向を含めまとまった思想と理論で体系づけられている。
▼この中に「ドミナントエリア」を説明した項目がある。特定の地域に多店舗出店することでエリア内の占有度を高める戦略は、チェーンストア展開の基本だ。エリア内に多店舗展開することでシェアを高め、収益性の向上を図り、隣接エリアにドミナントを広げて規模拡大を進める戦略だ。チェーンストア理論のもと、多くの企業がこの戦略に取り組んで来たが、ここにきて、自社の事業エリアから遠く離れた地域を本拠とする企業のM&Aや、飛び地への出店が見られる。食品スーパーの事業拡大、業界再編の動向にも変化が起きている。
▼「イズミ」が九州に、「ロピア」が関西に進出したとき冒険と見られた。「さえきセルバホールディングス」が島根の「ホック」を買収したときも「お手並み拝見」との言葉を聞いた。「ヤオコー」が設立した持ち株会社「ブルーゾーンHD」は、設立と同時に「文化堂」の完全子会社化、「デライトHD」の連結子会社化を発表して話題となった。「バローHD」は関東1号店となる「バロー横浜下永谷店」を飛び地出店した。「ベイシア」も、岐阜と愛知でSM8店舗を展開する「三心」を子会社化した。
▼ひとつの店舗の「商圏」を隣接させて集中出店し「商勢圏」をつくる。そこで、店舗相互の協力体制が敷かれ、販促や物流効率や顧客認知度などの相乗効果が高められる。『成長店のための必須単語701』を執筆した渥美 俊一氏の著書に『商業経営の精神と技術』があるが、その中には「商勢圏は必ずしも隣接させる必要はない」とあったような気がする。人口減少と消費減退が確実視される中で、よりスピーディーな成長の「打ち手」を必要としているのだろう。これまでのチェーンストア経営とは違った新しいアライアンスの形を構築する事を楽しみにして見ていきたい。
2026/03/10
