2月のコーネル大学RMPジャパンの『マーケティング』講義の中で、取り上げられた課題のもうひとつが「オムニチャネル管理」である。この課題は、単に店舗とECを繋ぐことではなく、顧客が生活の中で複数の購買接点を自然に使い分けても、企業側がそれを一つの買物体験として統合して提供できるかどうかにある。つまり、店頭、アプリ、ネット注文、チラシ、LINE、宅配、店頭受取などを、企業の都合ではなく顧客の都合でつなぎ直すことが重要になる。
▼食品スーパーでは、この課題解決は特に難しい。食品は毎日の生活に直結し、鮮度、価格、欠品、利便性に対しての顧客要求が極めて高いからだ。「今日の夕食に必要」「今週のまとめ買いをしたい」「重い物だけ届けてほしい」といった様々な購買目的があるのが特徴なので「顧客はどんな買物ミッションを持っているか」を起点に設計しなければならない。望むサービスが異なる顧客に対して、一律にアプリ導入やネット販売の強化を進めても、本当の利便性には繋がらない。顧客の生活導線の中で、どの場面にどう関与できるかを考えることが重要になる。
▼その際、大切なことは「リアル店舗とデジタルを分断しない」ことだ。顧客から見れば、店舗もアプリも宅配も同じ企業のサービスなのだ。オムニチャネル管理とは、接点を増やすことではなく、接点の間にある不便や不一致をなくすことになる。さらに、食品は「今日必要」な商品が多いため、欠品や遅れは他業態以上に致命的になる。したがって、オムニチャネル管理はマーケティングであると同時に、在庫管理、ピッキング、品質基準、配送・受取オペレーションまで含めた全社的な運営課題とも言える。
▼店舗とネットで価格が違う、ポイントのつき方が違う、チラシとアプリで特売内容が異なると、「分かりにくい」「不公平だ」と感じる。重要なのは、顧客一人ひとりがいくつの接点を使っているか、来店頻度が上がったか、宅配利用者が店舗でも買っているか、総合的な利用額や継続率が高まっているかとの視点になる。つまり、チャネル別管理から顧客別管理への転換が必要になる。核心は、「顧客の生活に合わせて買物体験を統合し、それを支える仕組みを全社で整えること」にある。このことは、生活インフラとしての食品スーパーをどう再設計するかという“経営課題”だ。便利で一貫した体験を実現できる企業こそ、これからの地域商圏で強さを発揮する。
2026/03/18
