コーネル大学RMPジャパンの3月講義のテーマは、『(ビジネスデータ)定量分析と意思決定』になる。基礎的な知識として「統計」が大事なのだが、カリキュラム的にゆとりなく、考え方を伝えるだけになってしまう。統計を学ぶことは、意思決定の質を上げ、組織の学習速度を上げるためだ。食品スーパーは、天候、曜日、相場、競合の動き、人員配置など、日々の揺らぎが大きい環境下での経営になる。このような世界は、経験や勘が重要なのだが、経験だけに頼ると「たまたまの出来事」を学びだと誤認し、誤解する危険が生じる。統計はその誤解を減らし、現場で起きていることを“再現できる言葉”に変える技術になる。
▼例えば「販促が効いた」と言うとき、売上が上がっただけでは判断できない。統計の基本を押さえると、結果を差分(リフト)で捉え、売上を客数×点数×単価に分解し、荒利やロスまで含めて施策を評価できる。つまり、統計は「感想戦」を「次回の精度向上」に変えられる。声の大きい人の経験談ではなく、再現性のある学習の場へ会議を変えることが出来る。
▼また統計は、現場の努力を正しく評価するためにも有効だ。店舗の数字には商圏要因の影響もあり、売上だけでは判断が難しい。統計的に分析することで、安定した成果なのか、特定の日だけ上振れしているのかが分かる。また、“異常”を早期に検知し、原因を現場で確かめ、対策の手も打てる。さらに、統計の本質は「断言しない力」でもある。データが少ないときの結論は危険だ。統計を学ぶと、推定値と不確実性(幅)をセットで語れ、リスクを管理し、限られた投資や人員を、どこに、どの順番で配分すべきかの判断を容易にする。
▼統計は難しい学問に見えるが、食品スーパーの実務で必要な入り口はシンプルだ。① 定義を揃える、② 平均だけでなくばらつきを見る、③ 比較は差分で語る、④ 相関と因果を混同せずに混ざり物を疑う、⑤ 時系列で“いつからおかしいか”を掴む。これら基本を身につけるだけで、データは「報告のための数字」から「未来を変える道具」に変わるのだ。統計を学ぶことは、個人の能力向上に止まらない。組織の共通言語をつくり、学習を仕組みに変え、現場の知恵を積み上げていく。統計は武器になる。今学ぶことが、将来の競争力として必ず効いて来るものだ。
2026/03/19
