ニデックの永守重信氏も「カンブリア宮殿」に2020年7月に出演している。当時の社名は、「日本電産」だったが、番組の中で「スピードこそ中小企業の武器」と話している。永守氏は、ピンチをチャンスに変え、一代で1兆5000億円(出演当時)の売上を誇り、モーターでは世界一の企業に押し上げた。創立50周年を記念して、2023年に「ニデック」に社名を変えた。この強いトップ主導の成長モデルが、ある段階で統治・組織・現場の健全性を損ない始めていたようだ。
▼今年1月に「ニデック」は、不適切会計の疑義を受け改善計画を公表、事業計画、ガバナンス、コンプライアンス、監査体制の見直しを進めていることを示している。成長を急ぐ経営の強さが、いつから組織の歪みに転化してしまったのだろうか。ニデックはモーター事業を核にM&Aを重ねて拡大して来たのだが、2025年以降は再成長の一方で、会計・内部統制・監査の面で大きな課題が表面化した。「強いリーダーシップの功罪」「数値目標の圧力」「M&A拡大型経営に必要な統治」を、何処かの機会に議論したいと思い取りあげてみた。
▼議論する上で、いくつかを整理しておきたい。先ずは、① トップ主導の高目標経営に関する件だ。高い(強い)目標は成長を生むが、行き過ぎると「達成のために無理をする文化」をつくる。ロイター社は、公表された改善計画について、攻めの数値管理が不適切な会計処理を誘発しうる土壌になったと伝えている。次に② M&A後の統合と統治の難しさだ。買収で事業を広げるほど、現場統制、会計基準、評価制度、文化統合は難しい。昨年の半期報告でも、のれん・無形資産の規模が大きく、買収を重ねる経営の重みが数字にも表れていた。
▼そして、③ 創業者型経営から制度型経営への移行の難しさだ。創業者・永守重信氏が経営の第一線から離れたことが報じられたが、これはニデックが個人の牽引力から、仕組みで回る企業への移行が問われている局面と見られる。また、④ 成長と統制のバランスの崩れだ。売上や利益を伸ばすことと、健全な内部統制を維持することは、別の経営能力が必要になる。
食品スーパーでも、「目標は高い方がよい」「スピードが大事だ」「現場は数字を作れ」との発想は必要だが、それが強すぎると、無理な販促、過剰な値下げ、現場疲弊、部門間対立、報告の歪みを生みやすい。“高業績追求が組織の健全性を壊す境界線はどこか”という普遍的な経営論点で討議を展開するのが良いと考える。
2026/04/09
