新時代のマネジャーは、なぜ難しいのか・・・

4月度のコーネル大学RMPジャパンのテーマは、「組織と人材マネジメント」であり、リーダーシップ、労働法、そしてSDGsを中心に学んで頂く。そのなかの「リーダーシップ」は、小野善行(滋賀大学)教授に講義頂くのだが、先生は日経新聞の経済教室面コラム「やさしい経済学」で「新時代のマネジャー」(2025年8月掲載)をお書きになっている。ここで、現場のマネジャーが直面する現実、部下との関係、上司との関係、変革の進め方までを理論と共に書かれているので、今週は、流通・小売業を意識してこのコラムを整理してみたい。

▼いま、マネジャーを取り巻く環境は、かつてないほど厳しくなっている。自分自身も現場の戦力として成果を出さなければならない。同時に、部下を育て、職場をまとめ、上司との調整も進めなければならない。加えて、価値観の多様化が進み、部下の側にも「できれば管理職にはなりたくない」という空気が広がっている。こうした状況のなかで、マネジャーの仕事はますます複雑になっている。

▼この現実を理解するうえで示唆的なのが、“ヘンリー・ミンツバーグ”の研究だ。彼はマネジャーの仕事の特徴として、いつも時間に追われ、多くの活動を短時間でこなし、その業務は細切れで、しかも重要案件と雑務が入り交じり、頻繁に中断されることを挙げた。つまり、マネジャーの毎日は、落ち着いて一つの仕事に集中できるものではなく、断片的な判断と対応の連続なのだ。ミンツバーグは、こうしたマネジャーの仕事を「計算された混沌」と表現した。混沌としているが、ただ振り回されればよいわけではない。目標達成という軸を持ちながら、その時々の状況に柔軟に適応しなければならない、という意味で、ここにマネジャーの本質がある。

▼新時代のマネジャーには、二つの視点が求められる。第一に、混沌を前提にしながらも、何を優先するかを見極める視点。第二に、人を動かすために、関係性を築き続ける視点だ。仕事は断片的で慌ただしい。だからこそ、目の前の出来事に反応するだけではなく、自分の職場をどの方向に導くのかという軸を持たなければならない。とくに流通・小売業では、環境変化への適応が日常そのもの。顧客の変化、人手不足、競争の激化、コスト上昇、デジタル化など、現場を取り巻く条件は次々に変わる。そうした変化のなかでマネジャーに必要なのは、万能であることではなく、むしろ、不確実で忙しい現実を前提としたうえで、周囲との協働を通じて前進をつくることだ。
マネジャーとは、整った世界で働く人ではない。矛盾や中断、想定外に満ちた職場のなかで、それでも成果を上げるために、人と組織を前に進める人のこと。新時代のマネジャーを学ぶ出発点は、この現実を美化せず、正面から受け止めるところにある。

2026/04/13