“人を動かす力”と問うと、多くは「リーダーシップ」を思い浮かべる。確かにそれは重要だが、組織のなかで人を動かす影響力はリーダーシップだけではない。連載コラム「新時代のマネジャー」(小野善行教授)では、リーダーシップと並んで「パワー」にも注目している。ここでのリーダーシップとは、フォロワーの意識を前向きに変化させる働きかけ。一方、パワーとは、相手の行動変容を求める影響力であり、場合によっては服従を求めるものになる。
▼リーダーシップは時間がかかるが、相手の納得や主体性を引き出しやすい。パワーは即効性があるが、多用すると相手にストレスを与えやすい。状況に応じて使い分ける必要がある。パワーには、報酬、強制、正当、専門、参照、情報の六つがある。人事評価や懲戒に関わる報酬・強制パワーは、管理職の地位に伴いやすいもの。正当パワーは、「この人の指示なら従うべきだ」という関係のなかで成立する。専門パワーや情報パワーは、知識や情報の差によって生じる。参照パワーは、人格的魅力や尊敬に基づくものだ。
▼学ぶべきは、自分がマネジャーとしてどの影響力に頼りがちかを自覚することだ。役職に伴う権限だけで押していないか。専門知識に頼りすぎていないか。逆に、信頼や尊敬に基づく影響力を育てられているか。小売業の現場では、ときに厳しい判断や即断も必要だが、長期的には、正当・専門・参照・情報といった、納得を伴う影響力を厚くしていくことが重要になる。さらに注目したいのは、マネジャーがリーダーシップを発揮するには、上司の支援が欠かせないということ。上司の正当パワーによって、マネジャーの取り組みが後押しされるときに職場は安定して前に進みやすくなるからだ。
▼新時代のマネジャーに求められるのは、部下との心理的安全性を高め、フォロワーシップを引き出すことだと結論づけることができる。心理的安全性とは、「この人、この職場なら、率直に意見を言っても大丈夫だ」と思える状態。フォロワーシップとは、単なる従順さではなく、建設的に関与し、必要なら上司に異論も述べながら、組織の成果に貢献しようとする姿勢だ。上司に対しても「ボス・マネジメント」が必要だとされる。マネジャーは、部下を動かすだけでなく、上司から支援を引き出す存在でもあるのだ。
マネジャーに求められるのは、関係を育てる人であること。部下には安心して発言できる場をつくり、主体的な行動を引き出す。上司とは信頼にもとづく支援関係を築く。そして必要に応じて、リーダーシップとパワーを使い分けながら、組織を前に進める。これが、新時代のリーダーシップの中身なのだ。
2026/04/17
