人は、「納得できない時」に不公平を感じる・・・

早稲田大学大学院教授の入山 章栄氏の著書『世界標準の経営理論』、15万部を超えるベストセラーとなっているが、時代の変化の中で、新しい理論が生まれたり、必要な理論のウェートが変わったりしていることから、ダイヤモンド・ハーバードビジネスレビュー誌に改めての連載を始めた。そこで連載論文のエッセンスを土、日に紹介している。今日から、「組織公正理論」になる。この論文の核は、①人はなぜ組織に不公平感を抱くのか、②公正には4つの側面があること、③不公平感は離職・燃え尽き・協力低下を招くこと、④絶対的な公平はなく、企業は自社の公正思想を持つべきことだ。

▼「うちの会社は不公平だ」という言葉を耳にすることがある。評価、配置、上司の振る舞いなど、きっかけは様々だが、多くの場合、自分は正当に扱われていないと感じた時に、強い不公平感を持つようだ。今回の「組織公正理論」が教えてくれるのは、まさにこの点だ。この理論が重要なのは、組織の公正さが単なる道徳論ではなく、経営そのものに深く関わるからだ。論文でも、公正さを欠く組織では、離職率の上昇、モラル低下、燃え尽き症候群、パワーハラスメント、業務パフォーマンスの低下など、さまざまな悪影響が起こると述べられている。「公正」は、組織の生産性と持続性に直結する問題なのだ。

▼ここで論文がまず整理しているのが、「公正」と「公平」の違いだ。公正とは、制度や意思決定、報酬や処遇が、社会的・倫理的な観点から見て正しい状態を指す。これに対して公平とは、それを受けた人が「自分は妥当に扱われた」と感じるかどうかという、主観的な認知になる。つまり、組織の側の仕組みが公正であろうとしても、受け手が公平と感じなければ、不満は消えないのだ。制度を整えるだけでは足りず、人がどう受け取るかまで考えなければならないことになる。

▼経営者や管理職は、「ルールに従っているのだから問題ない」と考えがちだが、現場の従業員は必ずしもそうは受け取らない。「自分だけ雑に扱われた気がする」「意見を言う機会すらなかった」と感じれば、不公平感は強く残る。人は数字だけで働いているのではなく、扱われ方の意味を見ながら働いているのだ。組織公正理論の出発点は、ここにある。人を動かすのは報酬だけではない。納得感、尊重、説明、参加感覚といった、目に見えにくい要素が組織への信頼を左右する。食品スーパーの現場は忙しいからこそ、扱われ方への感度が高い。よい組織をつくる第一歩は、「制度が正しいか」だけでなく、「いま現場は、何を不公平だと感じているのか」を問うことにある。

2026/04/19