富士山の山肌に、解け残った雪が鳥のような姿に見える「農鳥」が今年も姿を現した。日本ほど季節ごとの楽しみに富んだ国はあまりない。一年を春夏秋冬の4つに分けた四季をはじめ、多くの季節がある。「二十四節気」は、太陽の黄経(こうけい)によって一年間を24等分したもので、1つの節気は15日ぐらいになる。「春分」や「夏至」などよく知られているものだが、半月ごとの季節の変化を教えてくれるものだ。こうした節目は農作業の目安となり、農耕民であった日本人にとって生活から切り離すことのできないとても重要なものであった。
▼この二十四節気のそれぞれをさらに3つに分けると「七十二候」になる。七十二候は、気候や動植物の変化を5日ごとに知らせてくれるもので、二十四節気も七十二候も中国で作られたもの。日本独自の暦法である「貞享暦」は1685年に採用されている。この時の幕府天文方、渋川春海が、中国の七十二候を日本の気候風土に合わせた「本朝七十二候」に改訂した。「本朝七十二候」は明治7年の「略本暦」でさらに改訂されて、現在に至っている。
▼2026年は4月20日のカレンダーに二十四節気の「穀雨(こくう)」とある。この穀雨を3つに分けて「葭始生(あしはじめてしょうず)」・「霜止出苗(しもやみてなえいずる)」・「牡丹華(ぼたんはなさく)」と七十二候の言葉が載っている。穀雨は、春の雨が田畑を潤し、作物の成長を助ける時期を表す言葉で、この雨を目安に、田植えや種まきの準備を本格化させる習慣があった。「葭始生」は葦が芽吹く季節を現したもの、「霜止出苗」は霜が終り稲の苗が生長するという意味になる。「牡丹華」が文字通り牡丹の花が咲くという意味だ。
▼食品スーパーにとって、この七十二候は、売場に季節を売るための強いヒントになる。ただ、いくつか注意が必要だ。売場に季節の物語と納得感を与える補助線として使うのがよい。「霜止出苗」と掲示しても意味が分からないだろうから、七十二候の言葉、今の気候や暮らしとの関係、具体的な食卓提案、購買につながる商品へとつなげることが大切だ。暦の言葉に酔わず、現代の生活と地域の実態に翻訳することがポイントになる。もちろん、代表的ないくつかが売場につくられればよいわけで、“旬”と“相場”と“供給”の現実を見ながら展開してみて欲しい。
2026/04/23
