4月の講義の中に「SWGs(Sustainable Well-being Goals)」という言葉が出て来た。SDGsの次を見据え、人・社会・地球の調和の中で、持続的な幸福をどう実現するかを中心に置く考え方だ。2025年10月に日本のWell-being Initiative参画企業が「SWGs宣言」を公表し、2030年以降を視野に入れた新しいアジェンダ候補として打ち出した。ただし現時点では国連が正式採択した国際目標ではなく、日本発で議論と実践が進んでいる段階である。
▼SWGsの特徴は、SDGsが重視してきた「負の遺産を残さない」という発想から一歩進み、次世代に正の遺産を残すことを重視している点にある。宣言では、「人のウェルビーイング」「社会のウェルビーイング」「地球のウェルビーイング」の三位一体が掲げられている。人については主観・客観の両面で充実していること、社会については地域固有の文化や経済が尊重され活力と平和があること、地球については環境保全・再生と自然との共生が持続していることが示されている。
▼企業経営への反映は次の4項目、① 従業員のウェルビーイング。安全、納得できる処遇、成長機会、働きがい、心理的安全性。② 顧客のウェルビーイング。健康、安心、時間価値、選びやすさ、買物ストレスの低さ。③ 地域社会のウェルビーイング。雇用維持、地元取引、食アクセス、見守り、災害時機能。④ 地球のウェルビーイング。食品ロス、脱炭素、省エネ、資源循環、持続可能な調達。食品スーパーにとって、この考え方は非常に相性が良い。なぜなら単なる「物販業」ではなく、地域住民の食・健康・暮らし・つながりを日々支える生活インフラだからだ。
▼食品スーパー経営で特に重要なのは、ウェルビーイングを主観指標と客観指標の両方で見ることだ。主観指標とは、「買物しやすい」「ここで働けてよい」「この地域にこの店があって安心」といった実感。客観指標とは、離職率、労災件数、残業時間、欠品率、食品ロス率、地元調達比率、健康商品の購買率、来店頻度などになる。内閣府やOECDの議論でも、ウェルビーイングは主観だけでも客観だけでも捉えきれないとされている。利益は必要だが、利益は目的ではなく、地域の食生活を支え、従業員が誇りを持って働き、環境負荷を減らし、次世代にも続く商売にするための条件として捉え直す。その時、食品スーパーは単なる流通業ではなく、地域のウェルビーイングを支える基幹産業になる。SWGsは、その方向を表す新しい言葉だと理解すると分かりやすい。
2026/05/05
