
ネット注文用の専用カートが通路を占拠する米国スーパーの日常風景(写真:後藤文俊/流通コンサルタント)
米国の食品小売業界における動向に関し、FMI (The Food Industry Association)とNIQ(NielsenIQ)が発表した2026年の最新レポート「2026年の食料品買い物行動におけるデジタル変革(Digital Engagement Transforms Grocery Shopping 2026)」によると、米国のネットスーパーの売上は2028年までに4520億ドル(約67兆8000億円)に達すると予測している。ネットスーパー市場規模は、トヨタを凌駕する(正確に言えば2026年時点でトヨタを若干上回る)。小売成長の約75%をデジタルが牽引、ネットスーパーのシェアが4年で1.4倍に拡大(18.0%→25.5%)し、オンライン成長率は実店舗の約18倍(11.57%対0.62%)になっている。
▼現代の消費者は、店舗に行くかスマートフォンを使うかという二者択一をしていない。買い物客の94%が、2025年中にオンラインと実店舗の両方で食品を購入したオムニチャネル・ショッパーであることが判明している。自分の都合に合わせて、アプリでの注文、オンラインでの商品検索、実店舗での買い物をシームレスに使い分けている。レポートでも、実店舗とデジタルの体験をいかに摩擦なく一つの買い物体験として統合できるかが成功の鍵であると強調されている。
▼ネットスーパーの規模拡大につれて、競争は配送スピードへと移行している。現在、オンライン注文の約80%が自宅への配送であり、店舗受け取りを上回っている。2018年には注文から配達まで平均6.4日かかっていたものが、現在では平均3.1日にまで短縮された。食品においては、当日配送や翌日配送を当たり前のサービスとして要求するようになっている。「Amazon」はもちろんのこと、「Instacart」や「DoorDash」といった提携パートナーを活用して、いかに早く顧客の玄関先まで届けるかが、各社の生存競争を左右する究極の差別化要因だ。
▼さらに見逃せないのがテクノロジー活用の波だ。消費者の64%がすでに生成AIを試したことがあり、商品のリサーチやレビューの要約に活用している。「ChatGPT」などを利用して、献立の作成や買い物リストの自動作成を行う消費者も急増中だ。将来的にはAIが予算内で自動的に最適な店から注文を完了させるエージェンティックAIの普及も進んでいる。また、若年層を中心に「TikTok Shop」や「Instagram」などのソーシャルメディア上での衝動買いも爆発的に伸びている。米国の小売業は、こうした新しい発見から決済までのプロセスをいかに自社のプラットフォームに取り込むかに躍起になっている。
2026/05/12
