小売業新入社員との情報共有・・・①

この時期、「小売業界の動向について話して欲しい」との依頼がある。新入社員教育の一環だが、新入社員の多くがアルバイトなどで小売業での経験も多く、情報共有の場として用意されたもので、各業態の動向を伝えるのが主旨なのだ。今年の新入社員、経営統合や再編に興味があるようだった。「ウエルシアHD」と「ツルハHD」の経営統合、「トライアルHD」による「西友」の買収、「ヨークHD」の設立などの情報が相次いだことによるものであろう。これまでは“商品開発の面白さ”に関するテーマに興味をもってくれたが今年は違っていた。以下、情報共有した内容になる。

▼ドラッグストア業界で、わが国でも大型経営統合が生まれている。昨年12月、最大手のウエルシアHDと2番手のツルハHDとが経営統合し、ツルハHDを親会社、ウエルシアHDを完全子会社とする売上高2兆円超の巨大チェーンが誕生した。新生ツルハHDは32年度に売上高3兆円を目標とし、25~29年度を価値創造基盤の構築をめざす“フェーズ1”、30年度以降を価値創造基盤の本格稼働をめざす“フェーズ2”とする2段階の変革を計画している。公表した「経営統合後ビジョン」で、店舗網や人材を生かしたデータ活用、食品領域の強化などによるシナジー創出が掲げられている。ただ、どのようなプロセスで統合を進め、メリットをどう発揮していくのかは未だ見えない。業界全体への影響など、今後の具体施策を待つ必要がありそうだ。

▼トライアルは西友との統合後、新しい施策を矢継ぎ早に打ち出している。都市型小型フォーマット「TRIAL GO」の首都圏進出、新フォーマット「トライアル西友」の開発など、次々と手を打ち続けている。注目はこうした変化に対する西友の対応力の高さだ。トライアルの主力商品やPBを積極的に導入し、「西友」の屋号を維持したまま、大きく売場を変えることができる現場力には驚いた。トライアルの傘下に入り、売上成長を重視する方針へと転換したことで、稼ぐ喜びや商売の楽しさを実感しつつあるのだろうか。トライアル流の運営方法が、企業価値の向上を後押ししていると考えられる。240店超に及ぶ西友の既存店で改革をやり切ることができるかが今後の焦点といえる。

▼同様に、経営方針の変化が注目されるのが、ヨークHDである。セブン&アイHD時代の「スーパーストア」事業は十分な投資が行われてこなかった。しかしベインキャピタルの傘下に入ったことで、改めて成長領域として位置づけられ、既存店への投資も進むと見られる。3月には、ヨークベニマル出身の真船幸夫氏が、イトーヨーカ堂の会長兼社長に就任した。このような動きも、SMの再建に向けた明確なメッセージと受け止められる。既存店は立地面で優位性を有しているため、適切な投資と経営が伴えば業績回復の余地は大きい。(つづく)

2026/05/13