米国小売業の歴史的な発展過程は・・・①

コーネル大学RMPジャパン14期生も、米国ニューヨーク州イサカ市にある“Cornell大学”のキャンパスで授業を受ける為の準備に入った。Cornell大学訪問迄の約1.5か月の間に、米国と米国小売業のことを、自分なりの整理をお願いしている。お手伝いとして、今回は、米国小売業の歴史的な発展過程を簡単に振り返りたい。

1.雑貨店・個人商店の時代
米国小売業の原点は、地域の雑貨店、いわゆるジェネラルストアだ。広大な国土、分散した人口、未整備な交通網の中で、住民は近隣の小規模店に依存して生活必需品を購入していた。そこでは、商品を選ぶ自由よりも、店主との関係、信用販売、地域共同体の結びつきが重視された。この段階の小売業は、今日の言葉で言えば「地域密着」そのものであった。しかし、それは戦略としての地域密着ではなく、交通と物流の制約から生まれた自然発生的な地域密着だったのだ。

2.百貨店・カタログ通販の時代
19世紀後半から20世紀初頭にかけて、都市化と鉄道網の発達により、百貨店と通信販売が登場する。ニューヨーク、シカゴ、フィラデルフィアなどの大都市では百貨店が都市生活者の消費文化を牽引し、一方、地方・農村部には、「シアーズ」などのカタログ通販が商品供給の役割を果たした。ここで重要なのは、米国小売業が早い段階から、店舗販売と非店舗販売の二重構造を持っていたことだ。現在の「Amazon」やECの発展も、突然現れたものではなく、カタログ通販の延長線上にあると見ることができる。

3.チェーンストアと「A&P」の時代
20世紀前半には、「A&P(The Great Atlantic and Pacific Tea Company)」、「Kroger」、「Safeway」などの食品チェーンが拡大する。A&Pは1930年頃には約1万6000店を展開し、米国食品小売の巨大企業となった。この企業は単なる小売チェーンではなく、仕入れ、物流、加工、プライベートブランドを統合した垂直統合型の小売業であった。A&Pは「小売業がメーカーや卸に従属する存在ではなく、自ら流通を設計する存在になれる」ことを示した企業なのだ。この時代に、米国小売業の基本思想である、大量仕入れ、標準化、チェーンオペレーション、低価格、PB、物流統合が形成されだのだ。

4.セルフサービスとスーパーマーケット(SM)の誕生
SMの歴史で決定的に重要なのが、1916年にメンフィスで開業した「Piggly Wiggly」だ。Piggly Wigglyは、顧客が自分で商品を選び、レジで会計するセルフサービス方式を導入した。それ以前の食品店では、顧客が店員に注文し、店員が商品を取り出す方式が一般的であった。このセルフサービスは、単なる省人化ではない。これは、食品小売業に三つの革命をもたらしたのだ。ここに、近代的SMの原型を発見する事ができる。
第一に、顧客が売場を歩き、商品を比較し、衝動買いするようになった。
第二に、包装、ブランド、陳列、価格表示の重要性が高まった。
第三に、店員の接客力ではなく、売場設計そのものが販売力を持つようになった。

現代的なSMは、1930年8月4日にマイケル・J・カレンによって創られた「King Kullen」になる。(つづく)

2026/05/25